DS部屋

□運命の歯車
1ページ/7ページ

殺してしまえ
今すぐに

引き裂いてしまえ
今すぐに

どんなに望んで求めても
決して届かぬ光なら

殺意と憎悪で心を捕らえ
同じ道へと堕としてしまえ

壊してしまえ
今すぐに

穢してしまえ
今すぐに

どうせ元には戻れないのだから…


熱い位のシャワーをザァザァと頭から浴びせながら、スティーブは一人、己の中に潜む獣と戦っていた。

ダレンと再会して数日。
内に潜む獣は成長を続け、スティーブを蝕み続ける。
元々、ダレン達を罠に嵌める計画を練り、近付いたスティーブであったが、無邪気に自分を信じ、まるで昔に戻ったように笑顔を見せるダレンに、スティーブの心は完全に二つに引き裂かれていた。

ダレンを憎むな。
守ってやれ、と痛烈に訴える最後に残った一欠片の良心と。

ダレンを殺せ。
全てを穢し、己の物にしてしまえ、という獣じみた悪魔の心と。

「…そう焦るな…」
シャワーを頭から浴びながら呻くようにスティーブは呟く。
「…もっとあいつを…」
そこまで言って、スティーブは苦笑する。

苦しめたいのか?
見守りたいのか?

そこに思い当たり、スティーブは己を嘲笑った。
どちらでも良いでは無いか。
どちらにしても、今はまだ行動を起こす時期ではない。
今はまだ…

答えを先送りにしている自分の情けなさを、再度嘲笑う。
「どちらにしても…」
滅入りそうな気持ちを振り切る為に、シャワーを浴びながら頭を振る。
「…ダレン、お前を俺の物にしてやるさ…」

シャワーを止め、髪をかき上げながら、苦笑交じりにスティーブは呟いた。
決して届かぬ想いでも。
お前に焦がれる想いがある限り。
お前を逃がしはしないだろう。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ