DS部屋
□運命の歯車
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殺してしまえ
今すぐに
引き裂いてしまえ
今すぐに
どんなに望んで求めても
決して届かぬ光なら
殺意と憎悪で心を捕らえ
同じ道へと堕としてしまえ
壊してしまえ
今すぐに
穢してしまえ
今すぐに
どうせ元には戻れないのだから…
熱い位のシャワーをザァザァと頭から浴びせながら、スティーブは一人、己の中に潜む獣と戦っていた。
ダレンと再会して数日。
内に潜む獣は成長を続け、スティーブを蝕み続ける。
元々、ダレン達を罠に嵌める計画を練り、近付いたスティーブであったが、無邪気に自分を信じ、まるで昔に戻ったように笑顔を見せるダレンに、スティーブの心は完全に二つに引き裂かれていた。
ダレンを憎むな。
守ってやれ、と痛烈に訴える最後に残った一欠片の良心と。
ダレンを殺せ。
全てを穢し、己の物にしてしまえ、という獣じみた悪魔の心と。
「…そう焦るな…」
シャワーを頭から浴びながら呻くようにスティーブは呟く。
「…もっとあいつを…」
そこまで言って、スティーブは苦笑する。
苦しめたいのか?
見守りたいのか?
そこに思い当たり、スティーブは己を嘲笑った。
どちらでも良いでは無いか。
どちらにしても、今はまだ行動を起こす時期ではない。
今はまだ…
答えを先送りにしている自分の情けなさを、再度嘲笑う。
「どちらにしても…」
滅入りそうな気持ちを振り切る為に、シャワーを浴びながら頭を振る。
「…ダレン、お前を俺の物にしてやるさ…」
シャワーを止め、髪をかき上げながら、苦笑交じりにスティーブは呟いた。
決して届かぬ想いでも。
お前に焦がれる想いがある限り。
お前を逃がしはしないだろう。