DS部屋

□ずっと二人で
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「ねぇ、いい加減、新しい服が欲しいよ」
僕は思い切って、起きたばかりのクレプスリーに服をねだった。

僕の名前はダレン・シャン。
どこにでもいる普通の子供、と言いたい所だけど残念ながら違う。
半バンパイアだ。

クレプスリーの正体はバンパイアで、僕を半バンパイアにした張本人だ。
バンパイアの師匠で、僕はその弟子とか手下のはずだけど、クレプスリーは僕に優しくしてくれる。
僕を闇の世界に引き込んだのを、今でもちょっと気にしているみたいだった。
僕もクレプスリーはいい奴だと思うけど、やっぱり人生をメチャクチャにされたのは許せない。

半バンパイアになったおかげで、かわいい妹ジニーの血を飲もうとしてしまった。
それをきっかけに、僕は一端『死んだ』事にして、大好きな家族と永遠の別れを告げなければならなかったんだ。
勿論、学校の友達ともお別れだ。
それだけじゃない。
今の僕は簡単に人を傷つけてしまう力も備わってしまっている。
普通の子供と遊んだら、ふとしたはずみで大怪我をさせてしまう。
友達も簡単には作れなくなってしまった。

そんな僕の為にクレプスリーは僕をシルク・ド・フリーク(異形達のサーカスだ!)に連れて来てくれた。
ここの人達は半バンパイアなんか慣れっこで、簡単に僕を受け入れてくれた。
蛇人間のエブラ・フォンとも大親友になれて、僕はようやく楽しく日々を送れるようになった。
エブラは僕と同じくらいの年頃で一緒にいるだけでも凄く楽しい。
そうして楽しく過ごすうち、僕は自分の服装を恥ずかしく思う余裕が出てきた。

『死んで』生き埋めにされて以来、僕はずっと同じ服だ。
今まで気にする余裕もなかったけど、いい加減もうボロボロで恥ずかしい。
服をねだる位いいだろう、と思いつつ、なんだか恥ずかしくてなかなか言い出せなかったんだ。

「ねぇ、クレプスリー聞いてる?」
「…あぁ…」
クレプスリーの寝起きは悪い。
起きた後、しばらく愛想の悪いばあさんのように、ぶつくさ文句を言う。
そんなクレプスリーを見ているのも楽しいけど、今日はちゃんと話を聞いて貰わなくては困る。

「僕の新しい服だよ」
「…あぁ…」
「服!!!」
眠そうに生返事を返すクレプスリーになんだか腹が立って、僕はクレプスリーの額をバチンと叩いてやった。
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