DS部屋

□運命の歯車
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「ん?ダレンはどうした?」
頭から被ったタオルで、軽く首筋を拭いながら、スティーブはリビングでくつろぐハーキャットに問いかける。

「………もう…眠った…明日は学校だしな…」
ミスタータイニーによって、死体から作り出されたリトルピープルであるハーキャットはいつもマスク越しに話をする。
このマスクが無いと、元の死体へと戻ってしまうのだ。
鼻も瞼も無く、おまけに大きなマスクのお陰で表情も読み難いのだが、大分慣れた。

返答に間があった所を見ると、もしかしたら眠っていたのかもしれない。
瞼が無い為、寝ているのか起きているのかが判別し辛いのだ。
思った以上に、自分は長風呂をしてしまっていたようだ。

「起こしちまったみてぇだな、悪い」
苦笑しながら、ひょいと片手を挙げ軽く詫びる。

「…気に…するな…………」
そう言って、また黙り込む。
どうやら相当疲れているらしい。
恐らくまた眠り込んでしまったのだろう。

そんなハーキャットの様子にスティーブは肩を竦め、ちらりと寝室に目を向ける。
クレプスリーはバンパイアマウンテンへ戻っている為、寝室にはダレンしかいない。
「(寝顔にラクガキでもしてやるか)」
昔のようなイタズラ心がスティーブに戻ってくる。
ニヤリと口元を歪ませながら、そっとダレンの眠る寝室へとスティーブは忍び込んだ。

真っ暗な寝室に、ダレンの定期的な寝息。
案の定、ぐっすりと眠り込んでいるようだ。

カーテンの隙間からうっすらと月明かりが忍び込み、ダレンの寝顔を美しく照らし出す。あの絶望的な別れから、15年。
15年という歳月は自分を変えた。
外見も…中身も…

しかし、ダレンはまるで変わっていないように思える。
多少、外見は大人びたようであるが、やはり子供のままであるし、あの無邪気さはまるで変わっていない。

ふらふらと、蜜に吸い寄せられるように、スティーブはダレンの眠るベッドサイドへ辿り着くと、そのまま寝顔が良く見える位置でしゃがみ込む。

あまり日を浴びる事がない為、白く透き通るような肌。
長い前髪から覗く、瞳には驚くように長い睫。
美しく通った鼻筋にほんのり紅を差したような、薄く小さな唇。
眠っている為、やや脱力しているのだろう。
薄く開けられた口元から覗ける、小さな舌。

「ちったぁ、警戒しやがれ」
半ば無意識にダレンの髪を撫でながら、スティーブは苦笑した。
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