忍受小説
□お正月パラレル企画
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それからというもの,侑士は名前も知らぬ彼の事ばかり考えていた。
そして彼の事を調べたとき,侑士はもう一度彼に会ってみたくなり,気がついた時には再びあの場所に向かっていた。
「よぉ,また会ったな。」
まるで待ちぶせていたかのようにあの場所に彼はいた。
「アンタの名前,跡部景吾やな?うちら四天宝寺が敵対する氷帝の若き長…そうやろ?」
「ご自慢の情報網で調べたか。でもまぁ,素人でもそれくらい調べられるぜ,忍足侑士?」
「っ…体が動かない!?」
侑士はふと自分の体が動かない事に気付いた。それはまるで体が石になってしまったかのように手足が動かないのだ。
「いつの間に術を…」
「アーン…だから言ったろ?お前は忍の長には向いてねぇって。俺様の身の上は調べられても,術までは調べられなかったようだな。まぁ動きでわかるもんじゃねぇからな。」
「くっ…俺をどうする気や?」
侑士は懸命に術を解こうとするが,体は一行に動かないままだった。
「…どうしてほしい?」
そんな侑士の姿を見て,景吾はにやりとあやしい笑みを浮かべ,侑士に近づいた。そして,ゆっくりとその体を抱きしめ,侑士の唇を貧った。
「ンあっ……ア…」
侑士の口からは甘い吐息が漏れる。
「俺様の武器は,眼力。俺様と眼を合わせれば,一瞬にして俺の好きなように相手を操る事が出来る。こうしてお前を無抵抗にする事も,血を流さずに殺す事も…。」
「っ…そんな事,俺に言うてえぇんか?俺やてお前が敵対する忍の次期,長なんやで…」
侑士の言葉に,景吾は再び口元を緩ませた。
「俺様の術なんて,どうせお前にはわかっちまうだろ…?」
「……。」
景吾はその美しく長い指で,侑士の眼鏡にそっと触れた。
「侑士…。お前の武器もまた,その硝子の奥にある眼なんだろ…?」
「…景吾は何でもお見通しなんやな。参ったわ。」
侑士がそう言うと同時に,術は解け,力の抜けた侑士の体はまた景吾の腕に落ちた。