忍受小説

□お正月パラレル企画
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「景吾…。」

侑士の腕は,いつの間にか景吾の背中に回されていた。

「敵対する忍なのにな…」

景吾は侑士の頭を撫で,その綺麗な肌に愛おしむように頬擦りをした。
残酷にも,二人は敵対する忍と知りながら惹かれあってしまった。



それから間もなくして二人の長は,とある城に呼ばれ命が下される事になった。

その命令というのが,この二人にはあまりに残酷なものだった。
それは,二つの忍の長に殺しあいをさせ,長年の争いに決着をつけろというもの。
そして勝った方を,正式な城の忍として迎え入れるという。


二人に再び会う時間はなかった。そして数日後には,民や城の使いの者達が集まっただだっ広い平野に二人は立つ事となる。
勝負は一度きり…どちらかが死にいたるまで。

「景吾…。」

静まりかえった中で,侑士は小さな声で呟き,いままで外したことのない眼鏡をそっと地に落とした。

その瞬間,すでに戦いは終わっていた。

地に倒れたのは,侑士…そして景吾…。同時だった術に二人とも一瞬にして屍と化した。
城から出された数人の家来達が,二人の死を確認した。
こうして二つの忍の無能な争いは,若い二人の命を持って幕を下ろした。









「なぁ景吾…生きとるか…?」

「アーン?馬鹿な事言ってっともう一回術かけるぞ…ったく強烈なのかけやがって…くそ…まだ体が痛ぇ…。」

誰もいなくなったさら地に,二人はゆっくりと体を起こした。

「せやって,心臓も呼吸も止めさせる術なんて初めて使うたから。」

へらへらと笑う侑士に,景吾は眉をしかめた。

「初めてって…マジで死んだらどうする気だよったく…。でもこれでとりあえず村も安泰だな。俺もお前も家族はいねぇし。城の奴らも恐れる忍の頭首が死んだとなれば容易に襲ってはこないだろうしよ。」

「で…俺達はどうすんねん…?」

侑士は,地に落ちた眼鏡を拾い上げると,それをゆっくりとかけ景吾を見遣った。

「アーン…?ゆっくり旅にでも出るか?」

「ハハハ…それもえぇなぁ。」

こうして二人は忍としてでなく二人の民としての道を選び,その村を去ったのでした。


おわり
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