忍受小説

□ねこみみ☆Christmas
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「たっだいまー!!」
「ただいまー。」


跡部家の玄関に、侑士の声が響きます。その途端、二階からは地響きと共に、物凄い形相の景吾が下りてきました。

「侑士!!てめぇどこ行ってたんだ!!家の奴らが侑士が慈郎と出てくのを見たなんて言いやがるから、うっかり慈郎が変な気でも起こして掠われのかと思ったぜ!!」

ハァハァと息を切らし、怒鳴る景吾に、侑士はしっぽをくたーとまるめました。

「ごめんなさい…ゆーし宝物欲しくて…それで…ヒック…」

侑士の瞳から大粒の涙が零れ落ちました。

それを見た景吾が、はっと我に返るのを見て、慈郎は小さくため息をつきました。


「侑ちゃんはねぇ、玩具屋さんいった後、俺の家で、侑ちゃんほったらかしの自己チュー跡部のためにこれ描いてたんだよ…」

慈郎は、侑士のリュックサックから小さな本を取り出すと、侑士に手渡し、景吾に渡すよう促しました。

「グスン…景吾兄たま、ごめんなさい…でもいつもありがとう……ッ…めりぃくりすますやで…」

侑士はそっと景吾にそれを手渡しました。


「侑ちゃん、跡部が昔絵本読んでもらうのが好きだっていうのを聞いてありきたりな話じゃ跡部が詰まらないだろうからって、自分で話考えたんだよ…」

景吾は、渡された本をパラパラとめくりました。
それは、侑士の拙い字とクレヨンと描かれた絵本でした。

「わざわざ…作ったのか…?侑士がか?」

侑士は、こくんと頷きました。

「シンデレラを大元にした短編ストーリーなんだよね?」

慈郎が問い掛けると、侑士は再び頷きました。

「主人公の景吾姫が大冒険するんや…」

涙で潤んだ侑士の瞳が、そっと景吾に向けられました。

「ばっ…ばかやろうっ!!」

その瞬間侑士は宙に浮きました。景吾に抱きしめられたのです。


「こういうのは、先に言え!!」

突然抱きしめられた侑士はきょとんと景吾を見つめています。

「それに、俺様だって侑士に…」

景吾はごそごそとポケットから何かを取り出しました。

「これ……ゆーしにくれるの…?」

「当たり前だろ。この俺様がわざわざ作ったんだ!!他の奴らにやってたまるか!!」

侑士の前に差し出されたのは、不格好なふたつの縫いぐるみ。
一つは藍色の髪に黒いネコミミをつけた小さな縫いぐるみと、目の下にホクロをつけた男の子の縫いぐるみでした。


「ゆーしめっちゃ嬉しい!!」

侑士は縫いぐるみを抱きしめました。

そんな侑士を優しく撫でる跡部の絆創膏だらけの手を見た慈郎は、クスリと笑ってその場を後にしました。



「景吾兄たま…ありがとう!!サンタさんて本当にいるんやね!!ゆーし、本当にほしいもの、貰った気がするで!!」

侑士は、ぎゅっと景吾の首に抱き着きました。


「アーン?当たり前だろ。じゃ、これから読んでくれるんだろ。この…ツンデレラ」

「シンデレラやっ!!」



こうして二人の楽しいクリスマスは過ぎていくのでした。

おわり
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