忍受小説
□-GAME-
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暫く静寂を保っていた室内に、聞き慣れた侑士の携帯の着信音が鳴った。
「あ、ごめんちょお出てくるわ…」
「何やまた恋人サンか?」
からかうようなニタニタと笑う蔵ノ介に、侑士は少し頬を赤らめて部屋を出た。
「もしもし?景ちゃん?今仕事中なんよ。また終わったら電話さして」
『アーン?週に一度あるかないかの俺様の電話を、そんな簡単に切っていいと思ってんのか?』
「せやって〜そりゃ、毎日ご多忙な日々を送る跡部財閥の若社長からの電話やし、あまりに貴重すぎて切りたくわないけどぉ…」
きっと電話口の景吾は、今まさに困り顔の侑士の顔を浮かべ、失笑しているに違いない。侑士の中学時代からの恋人である景吾は、そういう男だ。
「あ、この前テレビで景ちゃんが他国の令嬢と見合いしたって見たで」
『バーカ。そんなのデマだろ。じゃ、お前の仕事が開いたら、また後で電話してくれ。あと、明日は絶対予定開けとけよ。社長命令だ。じゃあな』
「明日!?そんなっ…」
侑士が反論しようとすると、携帯のディスプレイは既に待受画面に戻っていた。
「もぅ…ほんまにあの強引さは、いつになったら直るんやろっ」
「でも、そこを好きになったんやろ?明日楽しみやなぁ」
「ひゃっ!!」
いつの間にか同じ廊下にいた蔵ノ介に侑士はびくりと肩をあげた。
「ぉ…脅かさんといてや蔵ノ介!!てか、電話聞いてたんかっ!!」
再び赤面する侑士に、蔵ノ介は笑いながら侑士の頭を撫でる。
「そんな大声で話しとったら、嫌でも聞こえるわ。なんやあっちの給湯室まで聞こえてたで?」
けたけたと笑う蔵ノ介に、逃げるように仕事仕事と呟き部屋に戻る侑士だった。
「明日か…侑士の誕生日やな」
蔵ノ介は、侑士のいなくなった廊下で、ふと呟いた。