短編集
□赤と白の心の旗
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小さいことでも
大きなことがある
見方を変えれば
世界も変わる
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「あー、痛ってぇ…」
身体が痛い。なにしろ、一対四でボコられたからだ。
お陰で、さびれた店のシャッターにもたれてからは動けないでいた。
「普通、肩が当たったぐらいで殴らねぇだろ…」
愚痴を夕暮れの空に放つと、鉄の味が口を支配する。
どうやら、唇が切れているらしい。
「大丈夫?」
すると白いハンカチが眼の前に差し出された。
「大丈夫っス」
そう言って、ハンカチを返した。ハンカチがあまりに白かったので、汚す気になれなかったのだ。
「あ、そ。それにしても酷いやられようね…ま、四対一じゃ仕方ないか…」
「見てたのかよ」
「まあね。でも、なんで逃げなかったの?」
その問いに、迷いもなく答えた。
「男だから」
「はぁ?それで逃げなかったの?」
「ああ」