短編集
□star of firefly
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人々が眠り、徐々に街の灯りが消えていく。
賑やか声も無く、世界は静寂と身を切るような寒さに支配されていた。
こう言う時は、学校の屋上からでも星が見える。
手すりを越えて、ギリギリのところで座り込む。
足は空中に投げ出され、その遥か下には灰色のコンクリートだけだ。
そして、見上げる
無数の蛍のような光を。
どれくらい時間が経ったのか分からないが、いつの間にか隣に人影があった。
「なにしてんだ?」
人影は驚いたのか、僕の方から一歩後退した。
そのせいで、月明かりに照らされた人影の姿が見えた。それは、同級生と思われる少女だった。
「なんだ、先客がいたのね…」
冷静を取り戻した少女が言った。
「君も星を?」
星を指さして聞いてみると、彼女は首を横に振った。
そして、表情を変えずに下を指さす。
「世界から消える、この汚れきった世界から…」