短編集
□life of firefly
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あの日以来
アタシのつまらない人生は終わりを告げ。
ごく普通程度の人生の幕開けを告げた。
「life of firefly」
週末の土曜日。
生きてることは無意味だ。
そう思ってた昔のアタシなら、最高につまらなそうな顔でふて寝でもかましてた。
でも、最近は違う。
アタシの人生最大の勇気を見事木っ端みじんに粉砕してくれちゃったり、その後いきなり喧嘩吹っかけてきたり、とにかく変な奴が現れたからだ。
ソイツのお陰で……いや、ソイツのせいで、酷く下らない人生は幕を下ろした。
「なあ、ナシなのに兎カットって」
相変わらずベットの上から色々と文句をいいやがる。
「ありでしょ。形似てるし」
アタシも相変わらず適当に答える。
愛情の愛もなければ、友情の友もない、情だけの関係。
そのなんとなく繋がってる感じが、何故か心地よく感じられた。
だけど だからこそ
お互いの深い所には踏み込もうとはしなかった。
アイツが入院してる理由も
アタシが死のうとした理由も
きっとそれに触れれば、この関係も、この場所も、壊れてしまうと思うから。
結局アタシは、臆病者なのだ。
「いや、ナシだけに無しだろ?」
その瞬間、鋭い音と共にスリッパがおでこを叩く。
「痛ってぇえ! スリッパは反則だ!」
ったく、人が色々と考えてるのにくだらないこと言ってるからだ。
さっきまで考えていたことが急に馬鹿らしく思えてくる。
「はぁ」
思わず溜息さえ出てしまう。
「うしし」
反対にアイツは笑った。
何が楽しいかわからないが、それでも楽しいく笑っていた。
それが何だかおかしくて、たった今溜息を吐き出した口がにやけた。
「うしし」
「あはは」
バカみたいに声をあげて笑うのは、楽しかったし。久しぶりに本気で笑えた気がして、スッキリとした。
他人が見たら、きっと変に思われるだろうけど、たまにはこう言うのも悪くない。
……たまには、だけど。