短編集

□ブランコ。
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「最近、彼女とうまくいってねんだ」

夕日の公園。

オレの隣でつまらなそうにブランコに座っている親友にそう尋ねた。

「で。私になにをして欲しいワケ?」

相変わらずのつまらなそうな顔が不機嫌に歪む。

「いや、お前もいちよう女だから―――」

「いちよう?」

さらに不機嫌に歪む顔+怒りマーク。

流石に生命の危機を感じたため、そこの部分を言い直してまた始めた。

「女性ですから、なにかわかるかなって」

我ながら情けないことはわかってる。
けどさ、『男と女は違う生き物』と言われるくらいだからこればかりはどうしようもないのだ。

と、いつの間にか不機嫌な顔は、どうしようもなく呆れた顔になっていたので、少しムッとした。

「なんだよ」

「アンタさ、最近バイト始めたって言ってたよね? それ、彼女は知ってんの?」

「知らないけど?」

なにしろ彼女の誕生日にスゲェ指輪をプレゼントするために始めたバイトだ。
言わば、サプライズバースデーってやつ。

それを、知られては意味がない。

「これだから男はダメなんだよ」

いまなんと言いました?
この小娘(同い年だけど)は、さりげなく『男』という存在を否定しましたよ。

オレの怒りに似た感情を知ってか知らずか、夕日へ向かってブランコを漕ぎ始めた。

「高い物プレゼントして驚かそう。とか考えてるでしょ」

うっ……。
まさしくその通りです。

「そんな物よりも一緒にいる時間の方が大切なの、安心出来るの。それが『女』ってものなの」

最初に、コイツからそんな話しが聞けるのに驚いた。
そして、次になにをすべきかがわかった。

「ちょっとオレ、彼女と話してくるわ」

ブランコから立ち上がり、ブランコを漕いだままの親友に別れを告げる。

「ありがとうな、こんどいっぱい奢ってやるよ!」

そう言って、駆け出した。

夕日の方に。

彼女の家に。









・・・・・・






一人、ブランコを漕ぐ少女。

「だから、物より一緒にいる時間だってば」

表情は嬉しさと悲しさを混ぜた感じ。

「だから男はダメなんだよ。鈍感だから」
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