刹那よ
永遠であれ
[ 二人の世界 ]
オレンジ色の太陽だけが照らす海の防波堤に、僕等は並んで座っていた。
辺りには何もなく、僕等の邪魔をするものは誰もいない。
「ねえ、せっちゃん」
隣にいるトワが僕を呼んだ。
「私、せっちゃんが好きよ」
「……うん」
精一杯の力を振り絞って言えたのは、たったそれだけだった。
「だから、最後まで側にいて欲しいの」
僕は何も言わずにトワを抱きしめた。
本当は、何も言えなかった。
何かを言おうものなら、きっとそこから気持ちが溢れ出してしまい、トワを困らせてしまうだろう。
「ありがとう」
しばらく、僕等は何も言わずに抱き合っていた。
お互いの存在を確かめる為に。
お互いの存在を刻み込む為に。
「ありがとう」
トワは小さくそう言うと、唇を重ね合わせた。
最初で、最後の口づけは
切なくて
悲しくて
それでもこの瞬間が
いつまでも続いて欲しいと思えた。
だけど
それでも、唇は徐々に離れて行く。
「せっちゃん、私がいなくなっても……ずっと、ずっと……生きていてね」
「……うん」
「約束……だから、ね」
「……う、ん」
「私、ずっと……刹那の…こと」
愛してるよ
「っ……!」
堪えてきたものが、全て溢れ出した。
目が熱くなって、涙がとまらずに雫になって落ちていく。
「僕も……永遠を、愛してる」
愛しい人を抱き寄せ
僕は泣いた
情けないほど声をあげて
いつまでも
いつまでも
最愛の人を抱きしめて
F i n.