Story of Girl's Side 2nd Kiss

□Destiny012.Battle in Castlevania@
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――秋・羽ヶ崎学園放課後。
音楽室。

リエール「じゃあ…年末のカウントダウンライブの詳細はこれで以上だから。
皆、まずは自分達のアルバム聞いてしっかり歌とダンスの復習しておいてちょうだいね」
針谷「よっしゃー、燃えるぜ!
今日帰ったらさっそく家に帰ってヴォイトレやらねーとな!」
佐伯「(ああ…憂鬱だ…。
年末はかき入れ時で店が忙しいってのに…)」
クリス「カウントダウンライヴかぁー、なあ志波君佐伯君ハリー君氷上君、今からめっちゃ楽しみやんなぁ!
皆頑張ろうな!」
志波「ああ…そうだな」
クリスの張り切りぶりに、志波はややおどけたようにふっと笑う。
氷上「与えられた使命は全うするのが僕たち新守護戦士の役目!
カウントダウンライヴは先輩のV6さんたちをはじめ、大勢のタレントたちが出演する。
そのタレント達の中に埋もれないようにするためにも、明日から皆で集まってまずどういった方向で僕たちのことをアピールすればよいか、さっそく勉強会というのはどうだろうか?」
針谷「おっ、それいいな!
明日は丁度何も予定も入ってないし、俺なら色んなアーティストのライヴDVD持ってるから、それ見まくって良いパフォーマンスはどんどん盗んでくってのはどうだ?」
クリス「僕もそれ賛成!」
志波「…悪くはない案だな。
佐伯、お前はどうだ?」
佐伯「…ごめん、俺はパス」
針谷「あ、なんだよ佐伯!
テメ、逃げる気かよ!」
佐伯「…別に逃げるつもりなんかない。
明日はどうしても外せない用事があるんだ、だから明日は参加できない」
クリス「ええー、そんな瑛君セッショウなぁ」
佐伯「セッショウでもなんでも、無理なものは無理」
リエール「…まあとりあえず皆がやる気になってくれてるのならとってもいいことだわ。
パフォーマンスはあなたたちに任せるから、V6たちや他のタレントたちのもしっかり研究しておきなさい。
…特に針谷君、いいわね」
針谷「ああ、わかってるっつーの」
リエールからの言葉に、針谷は仄かに頬を紅潮させて口答えする。
そう、プロのミュージシャンを目指している彼にとっては、自分自身を5万人のジャニーズファンにアピール絶好の機会でもあり、これまでの積み重ねてきた実力が大いに試される場でもあるのだから、彼のバンドのプロデューサーを務めているリエールが念を押すのも当然といえるだろう。
リエール「…それじゃあ、私はこれで一旦会社に帰るから、本番の時は皆さんドーゾよろしく♪」
リエールは椅子から立ち上がり、沢山のファイルやらを抱えて音楽室を後にしようとした瞬間。
リエール「う…!」
一瞬ふっと視界がかすみ、ズキンと頭痛が走って立ちくらみを起こしたリエールは、書類を散らばせながらがくりと片膝をつく。

5人「「リエールさん!」」

針谷「お…おい、大丈夫かよ?!」
クリス「ママさん、いったいどないしたん?
具合でも…悪いん?」
リエール「…だ、大丈夫よ。
ちょっと疲れてるだけみたいだから…」
クリス「…そうなん?
でも、なんだか体が熱いで?」
クリスと針谷がリエールの体を支え、不安そうに心配する一方で、佐伯・志波・氷上の3人が散らばった書類を拾い集める中。

クリスの言ったとおり、実はリエールは朝からどうにも体の調子が芳しくなく、この時点で既に39度の熱を持っていたのだが、今日は会社の方でもどうしても外せない会議があったこともあり、また、佐伯たち5人もそれぞれバイトや部活を持っているためこうして中々集まれる機会も作れないため、無理を押して彼女ははね学までやってきたのである。

特に父の会社を手伝っているクリスは、リエールがどれだけ多忙である人なのか、それをこの5人の中で一番理解していることもあり、
クリス「なあ…ママさん、このまま帰ったら危険やって。
もしよかったら僕の秘書を出して車で送らせるで?」
と、提案したが…リエールはやや苦しそうに息を繰り返しながらも、首を左右に振った。
リエール「…ありがとう、クリス君。
でも…だ、大丈夫よ…。
今日は会社からここまでタクシーできたし…ここから会社までならそんなにかからないから…。
タクシー捕まえるから平気よ」
クリス「ママさん…」
針谷「リエールさん…!」

佐伯「あの…リエールさん、これ…書類」
志波「順番わからないから適当に集めておいたが」
氷上「これ以上落ちている書類はないのは確認したので、これで全てかと」
リエール「…ありがとう、瑛君。
志波君・氷上君。
ロックに渡さなきゃいけないものもあるからなくしたら大変だわ。
…ええ、確かに枚数分あるわね。
ごめんなさい、心配かけて」
針谷「あ…あの、もしアレだったら、その…俺が駐車場までついていってやってもいいぜ」
リエール「ふふ…大丈夫よ、針谷君。
これくらい…た、たいしたことないもの。
前にも40度の熱でもライヴやったことあるから…」
針谷「マ、マジかよ?!
…スゲェ…」
リエール「…ふふ、別にスゴイことでもなんでもないわ。
私は…プロの歌手なんだもの。
氷上君の言う通り、どんな状況でも与えられた仕事は――
使命は最後まで全うしなくてはプロとは言えないわ。
たとえ…そこで倒れたとしても」
リエールは熱で頬を紅潮させながらも、にこりと魅惑の微笑を針谷に向けてみせる。
針谷「あ……」
その微笑みはあまりにも柔らかでそして美しくて、彼女の顔が間近にあるということもあって、針谷の鼓動はどきどきと小さな波を打ち始める。
リエール「だから…針谷君も精一杯自分の全ての力を出して頑張って。
自分を信じる心が何よりも強い力を生み出すこと――
踏み出せば必ず道は開けるわ。
…信じることが夢をつなぐなら、その先にきっと…奇跡は生まれるから…」
針谷「…リエールさん…」
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