Story of CCFF7

□Mission:012
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※ ※ ※
――モデオ渓谷・北部。
ジェネシス軍施設が見渡せる崖の上では。

ザックス「…ふう。
ちょっと待つか」
一旦足を止め、ツォンともう一人の神羅兵の到着を待つ傍ら。
クラウドが語りかける。
クラウド「ザックス、あのさ…」
ザックス「ん?」
クラウド「その…ソルジャーってどんな感じなんだ?」
レディ・セフィロスとの異名を持つリエールに聞くにはちょっと気が引けると感じたクラウドは、ザックスにそう尋ねてみるが。
ザックス「質問の意味がわかんねえぞ」
クラウド「うーん…」
彼にしてみたら、おそらくソルジャーになったことで何か心境や身体的に大きな変化はあったのかを尋ねたかったようだが、それをうまく伝えられずにうなるクラウドに、ザックスはあっけらかんと告げる。
ザックス「ま、お前もなってみりゃわかるよ」
リエール「ザックス、それ答えになってないわよ」
クラウド「なれるものならね…」
肩を落として落胆するクラウドに、再びザックスは飾らずにストレートに告げる。
ザックス「大丈夫。
俺、簡単になれたし。
そのためにお前これからレディ・セフィロスにビシバシ鍛えてもらうんだろ?」
クラウド「ああ、うん…そうだけど」
リエール「クラウド、そう落ち込むことなんてないわよ。
ザックスが簡単になれた、なんて、アレは例外だから」
クラウド「そ、そうなのか?」
ザックス「…リエール、部下に変な入れ知恵を仕込むな。
そして誤った情報を教えるなっての」
リエール「あら、違ったっけ?」
彼女が悪戯っぽく小悪魔な笑みを見せ付ける一方で、彼女はクラウドに先ほどの話を続ける。
リエール「それよりもクラウド、チャンスなんていつ巡ってくるかわからないものだし、頑張ればいつかきっと道は開けるわ。
…私なんて会社のことから何から何まで何にも知らずにいきなりソルジャーになったもんだから、それはそれは大変だったわよ。
セフィロスやジェネシス、アンジールたちに置いてかれないように必死で勉強したしね。
アンジールのトレーニングはホント厳しかったなぁ」
クラウド「リエールさん…」
3年前の苦しかった記憶を思い起こしながら、彼女は懐かしそうな瞳でそう語る。

今でこそ、史上最年少でソルジャー入りし、かつその強さと美貌からレディ・セフィロスと言わしめているリエールではあるが、意外にもそんな苦労した過去があったなんて、と、クラウドは心の奥で密かに尊敬の念を抱く。

リエール自身も、王国崩壊後にもしミッドガルへ逃れていなければ、あの時セフィロスたちと出逢うことも――ひいてはこの神羅カンパニーにソルジャーとして入社することもきっとなかったであろう。
もしそうでなかったら今頃は一体どんな運命を歩いていたのか、それは彼女自身にも決して判りかねることではあったが、彼女もまたそういった一つの運とチャンスと偶然とタイミングが折り重なって『今』があることを実感しているからこそ、彼女はクラウドに説くように自らの経験を語ったのだった。

リエール「だからクラウド。
あなたが頑張るのなら私も力を貸すから、困ったことがあれば何でも相談しなさい。
あ、ちなみに『ソルジャーに今すぐしてくれ』ってのはナシよ」
クラウド「…うん、もちろん。
ありがとう、リエールさん」
クラウドは頷く。
セフィロスは他に追随を許さない天上人のような存在で、近づくことなんて決してできない雲の上の人なのに、一方のレディ・セフィロスはこんなにも近くにいて、とても明るくて優しくて。

今までの二人のやり取りを見た限りだと、ザックスもまたリエールには何だかんだ言っててもかなりの信頼を寄せているようだし、こっちの二人の方がずっとお似合いな気がするのは間違っているのだろうかと、彼はふと思う。

むしろこうして二人と知り合い、なおかつリエールに目をかけてもらえただけでも自分はかなりの幸運に入る方だと思わなくてならない。
多数いる神羅兵で、二人に憧れ、近づくことも、話しかけることすらできない兵士たちは数多くいるのだから。

ザックス「リエール、クラウド、あれ…!」
そしてザックスがふと指を指す先。
そこにはこの雪積もり吹雪く中、この銀世界には決して似合わぬ、一棟の紅い建物――
リエール「これは……!」
ツォン「魔晄の試験発掘に使われた施設だ」
崖の上から様子を見てみれば、そこには案の定武器を携帯した多数のGコピーらしき兵士たちがあっちこっちへうろうろしている。
ザックス「じゃあ俺が調べてくる」
リエール「えっ、それってマジで言ってるの(汗)?」
ザックス「おう、仕事なんだからマジなのは当たり前だろ」
ザックスがまだ2ndだった頃、とある潜入捜査でリエールも同行したことがあったのだが、その時はザックスのやりすぎで潜入作戦が失敗し、結局力押しで敵を殲滅させた経験もあったことから、やや不安を抱いたリエールが問いかけたのはそれを危惧してのことだった。

ツォン「我々の本来の任務はモデオヘイムでの調査だ。
ここで戦力を失うわけには行かない。
かといってジェネシス軍の動向を見逃すこともできない。
つまり…」
ザックス「つまり、できるだけ戦闘を避けて潜入しろ、ってことだろ」
ツォン「そういうことだ」
リエール「何かタークスっぽい仕事ね。
…ザックス、本当に大丈夫?」
ザックス「何だよ、その疑惑たっぷりの眼差しは…。
もうあの頃の俺じゃないってところ、見せてやるぜ!」
リエール「ふーん、そう。
ならよろしく頼むわ、ザックス君。
(ま、いいか…何かヘマやらかしたらフォローすればいいわけだし)」
リエールが内心でそう毒づく傍ら。
ツォンが詳細を説明する。
ツォン「入口はあの倉庫の裏手にある。
施設に入ってしまえば好きに暴れて構わない」
ザックス「よし、任せろ!
ソルジャーはただの戦闘バカじゃないってところを見せてやる」
リエール「ちょっとそれって私も入ってるわけ?」
隣でリエールが睨みを利かす傍ら。
ザックス「ほ、ほら、言葉のあやって奴だ、うん。
――クラウド、お前も見てろよ」
クラウド「うん」
ツォン「この吹雪だ。
体温の低下にも注意しろ。
動かずじっとしていたらどんどん体温が下がっていくぞ。
下がった体温は得意のアレで回復しろ」
ザックス「アレ、か。
わかった!」
リエール「んじゃ、適度に話もまとまった所で静かにいってきて下さいな」
ザックス「おうっ!!」
リエール「だから静かにって、今言ったばかりでしょ!」
ざくざくと、意気揚々にその場を離れるザックスの背を見つめながら、クラウドがポツリと呟く。
クラウド「ザックス…大丈夫かな」
リエール「ま、あれでもプロのソルジャークラス1stですからね。
まずは彼が中で暴れるのを待ちましょ」
クラウド「うん、わかった」
リエールのザックスを信じるその言葉に、クラウドはこくりと頷く。
(これがまた頷き方が可愛いんだよなぁ、クラウド:BY管理人)
リエール「あ〜、それにしても寒いっっ(涙)!
…ねえ、ツォンは寒くないの?
そんなスーツ一張羅だけでよく突っ立っていられるわね」
ツォン「プロならばどんな状況下においても弱音は吐かないものだ」
リエール「あ、そ……」
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