Story of DISSIDIA FF

□Shade Destiny:002
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※ ※ ※
――竜神の森、その奥の男の小屋にて。
PM13:00。

リエール「ごめんなさい…お昼までごちそうしてもらっちゃって」
セフィロス?「…構うことはない。
君みたいな美しい女性をこの森に一人放っておくわけにはいかないからな」
――このセフィロスとそっくりな男と彼女が出逢ってから後。
リエールはお昼ごはんを食べずにお店をフリオニールたちに任せて出てきてしまったため、彼女のお腹の音を聞いた男はこうして自らの小屋に案内し、シチューを振舞ったところだった。

そのあまりに不思議な光景に彼女は思う。
あのセフィロスがこうして料理して、こんな森の奥でささやかに生活しているなんて――

リエール「ね…ねえ、一つ聞いてもいいかしら」
セフィロス?「何だ?」
リエール「あなたはどうしてこの森にいるの?
…この森は私みたいな関係の在る人しか入ってこれない森のはずなのに……」
そんな彼女の問いに男は刹那目を閉じ、なにやら思考をめぐらせたが、ゆっくりと瞳を開けると静かにそのいきさつを語り始めた。
セフィロス?「…気づいたら私はこの森の中に迷い込んでいた。
どこから来てどこに行くのか…自分の過去も名前さえもわからない。
だが、私の容姿を見ただけで人々は恐れおののき、慌てて逃げていくんだ」
そんな彼にリエールは、
「…まああのセフィロスとそっくりだし、あの破壊者の姿しか知らない一般人なら当然逃げるわな」と、内心でうなづきながらも、そんな思いを知る由もない男は言葉を続けていった。

セフィロス?「だから…私はこの森に身を隠し、ここでひっそりと暮らしていくことに決めたのだ。
ここならば竜神の加護があるとされる神聖な森だし、人も滅多に近寄ってこないからな」
リエール「…そうだったの。
ごめんなさい、何か立ち入りすぎちゃったみたいね」
セフィロス?「…そんなことはない。
ここにいるというのは私自身で決めたことだ。
…それに、君ならばどういうわけか初めて逢った気がしない。
もっと以前から君を知っているような…そんな感じがするんだ」
リエール「そ、そう…?
私はあなたに逢ったのはこれが初めてだけど…」
男の優しげな眼差しに、リエールの心が大きく揺れ動く。
もし本物のセフィロスなら…普段からこんな優しげな瞳なんて滅多に見せやしない。
それなのに、こうしてやはり孤独でいる部分はどこか本物のセフィロスと共通している。

もし…彼がセフィロス・コピーだとしても、こんなにも穏やかで、ましてや自我を持つコピーなんて存在するはずもないのだが――
ただ、彼の左手の甲のナンバリング『V』が『あの実験』の意味を表しているものだとしたら、彼はやはりセフィロス・コピーであることに間違いはないだろう。

セフィロス?「…リエール、といったな。
君からは…こうして共にいるだけで温かいものを感じる。
…こんな想いは初めてだ」
リエール「そ、そうなの…そう思ってもらえるならよかったわ」
セフィロス?「――そういえば君もさっき私を見て『セフィロス』と言っていたな。
…私を見て逃げる者たちも皆その名前を口走っていた。
私は…あの男にそんなにも似ているのか?
私は自分が誰なのかさえもわからないのに…」
リエール「え、えっとそれは……」
いきなり確信をついた質問に、彼女は思わずたじろんでしまう。
セフィロス本人を知っていてなおかつかつての恋人でもあった以上、そのセフィロスが実は破壊者で星をぶっ壊そうとした悪い奴など言えるはずもないし、ましてや確証がないために彼自身がセフィロス・コピーである可能性も告げるわけにも行かない。
もしそんな衝撃的な事実を告げれば、きっと彼は取り乱して自分自身を追い詰めて――
もしかしたら第二のセフィロスになってしまう可能性だって考えられる。

彼は記憶を失っているとはいえ、この森を愛し、森の動物たちを大事にする優しい心を持っている。
それはセフィロスが全ての破壊と憎悪と引き換えに失ってしまった心の欠片であり、その心をもつもう一人のセフィロスが今、この目の前にいる。

リエールがずっと夢に見ていた、優しく人間らしい心を持つセフィロス――……。
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