Story of 戦国BASARA2×GS

□第三章 とまどう鼓動
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葉月「『四神四将が1人、紅き将と蒼き将は、満月輝けし夜の刻――
武田が領地森にてその鋭き爪と牙を幾度も交えん。
しかし共に手負いし、共倒れならんとき、その戦いは武田が忍の放ちし爆煙にて阻まれん。
その忍の名は猿飛佐助――
真田源二郎幸村に仕えし、真田忍隊が長。
そしてやや時遅れてその場に龍の右眼・伊達軍軍師にて家臣片倉小十郎駆けつけ、主君を連れて奥州・米沢城へと引き返したり。
…して翌朝、手負いの青龍が将、自室にて目覚めたし。
そこに黄龍の巫女、部屋に立ち寄らん…』」


※ ※ ※
――AM8:00奥州・米沢城――
兵士A「片倉様!」
小十郎「おう、体はもういいのか」
兵士B「へい、おかげさまで…」
兵士A「本当にすいやせんでした!
俺たちがついていながら、筆頭があんな…」
兵士B「きっちりケジメつけさせてください!」
小十郎「…いや」
昨夜政宗と幸村が武田の領地の森にて交戦中、突如現れた猿飛佐助の放った爆煙によって負傷し、痛々しく体のいたるところに包帯を巻いた部下たちが、上司の小十郎に深々と頭を下げていると。
そこへ使いの童が、小十郎に政宗が目覚めたことを告げる。

小十郎「…なに?
政宗様がお目覚めになられたと…?」

――そして、寝付けなかったようで随分早くに目が覚めてしまった愛華は支度を終えると、政宗の部屋をおとずれた。
白龍「ふああ……」
愛華「…政宗、起きた?」
政宗「…愛華か」
愛華「…どう?
傷の調子は……」
政宗「ああ、おかげさまで最悪だぜ。
…心配しにきてくれたのか」
愛華「…一応、山賊から助けてもらったし」
政宗「…そうかい。
ったく、世話ねえよな。
逢った早々おまえにこんな無様なサマさらしちまってよ」
愛華「…政宗…」
政宗「とりあえずまた今度あの真田に会ったら、ぜってぇ落とし前つけてやるぜ」
愛華「…………」
窓枠に腰をかけ、穏やかな蒼の空を見上げながら政宗はさも口惜しそうにそう告げる。

小十郎「――政宗様。
小十郎にございます」

政宗「ああ、入れ」

小十郎「…失礼します。
傷の具合はいかがですか」
政宗「ハッ、最悪だぜ。
てめえばかりか他のヤツにまでこんな情けねえところ見せちまって…あの紅いの…!
次会ったら…!」
あの幸村の破天荒なまでの強さと、うっとしいほどのその熱血ぶりに忘れたくても決して忘れえぬ印象を覚えた政宗は、唇を噛み締め、さも不満げにそうもらすが――
小十郎「失礼」
そう一言言って小十郎は、あろうことか主君に対し、その頬に向かってパチンと手を挙げたのであった。
政宗「…!!」
愛華「こ、小十郎…!!」
――この片倉小十郎は、巷では独眼竜が右眼と呼ばれ、その名に相応しく剣術は達人の域を達しており、伊達政宗に固い忠誠を誓い仕えている軍師である。
故に政宗に対しては常に紳士的で礼儀正しく忠義を尽くす一方で、敵には好戦的な一面を見せる部分も持ち合わせており、その表裏の激しさを知る敵からは恐れられている存在でもある。

そんな風に自分には絶対手を挙げることなどしないはずの家臣・小十郎からはたかれた政宗が、しばしその場に固まる中で、一方の小十郎は再び正座をし、深々と頭を下げると、その胸の内を語り始めた。
小十郎「ご無礼の段、あとからいかような罰でもお受けします。
――ですが!!
どうかこれだけはお聞き下さい」
愛華「小十郎…?」
白龍「…………」
小十郎「…先日の出向で同行した者の内8名が負傷。
内2名は足を折り、歩くことすらままなりませぬ。
武田の忍の爆煙に巻かれたとはいえ、これは決して名誉の負傷ではありません。
…全ては殿の御遊行に同行したがためによるもの。
このような不名誉は二度と遭ってはなりませぬ」
政宗「…………」

小十郎「――一国の主であるということは、その国その民の命・誇りまでも背負うということ。
『それ』が、政宗様のお命です。
どうかそのお命……大切になさいませ」

愛華「…小十郎…」
白龍「……………」

小十郎「――小十郎めの願いはそれだけでございます」

政宗「…小十郎…」
小十郎「しかし主君に手を挙げるなど、許されるとは思っておりません。
――格上は度重なるこの非礼の段、この片倉小十郎の一命を持って……!」

愛華「こ、小十郎!!」
それは、小十郎がその腰に携えた刀にて切腹を計ろうとした、その瞬間だった。
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