Story of 戦国BASARA2×GS

□第六章 天之青龍
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氷室「葉月、香月……!」

愛華「氷室、先生……」

葉月「…………」

――愛華に本の返却を任せた後、一向に鍵を返却しにこないため、心配した氷室が図書室へ向かっていたその矢先。
葉月と愛華のキス現場を目撃してしまった氷室は、しばし思考が停止し、その場に立ち尽くす。

氷室「……オホン。
二人ともここで何をしている」
葉月「何をって…キス。
今度の撮影のポーズを研究してた」
愛華「け、珪!!」
氷室「…こんな人気のないところでわざわざ、か?
――そんな研究より、学生の本分は勉強だ。
先日私が出した微分積分講座のテキストは完璧に理解したのか」
葉月「ああ。
先生も知ってるだろ?
俺は一度記憶したものはほとんど忘れないからな」
氷室「ならばよろしい。
部活以外に用のない生徒はとっくに下校する時間だ。
月曜の数学ではテキストの内容を正しく理解しているか反復も兼ねて確認する。
この土日の連休とはいえ、羽を伸ばすのも結構だが復習を怠らないように」
愛華「は…はい。
わかりました」
葉月「ああ」
そうして氷室はいつもの鉄仮面を崩さずに淡々と告げると、その場を後にしたのだった。

愛華「あ…あれ、そういえば先生ここに何しにきたんだろう」
葉月「…おそらく、見回りにきたんだろう」
愛華「見回り…?
――あっ!!
そういえば、図書室の鍵…返してない」
ポケットを探れば、そこには氷室から預かったままの図書室の鍵が。
…かといって、今の現場を見られてしまった以上、気まずくて後を追いかけるわけにも行かず。
――とりあえず、氷室先生を探していたが会えなかったということにして、他の先生に預けておいた方がいいかもしれない。


※ ※ ※
――それからの夜。
お風呂もご飯も済ませ、復習のため机に向かう愛華だったが、夕方の珪と先生のことや、今までの政宗・幸村たちとのことがあったせいか今ひとつ身に入らず。
あらかた完璧に理解している事もあり、彼女は引き出しからソーイングセットやらフェルト、綿やらを取り出すと、何やら一人ちくちくと裁縫をやり始めた。

――政宗や幸村、白龍たちと過ごした本の中の2週間。
今、こうして思い起こせばまるで夢の中にいるような出来事だった。
でも、こうしてあの不思議な本の中から戻ってこられたということは、決して夢なんかじゃない。

愛華は裁縫の手を止め、窓の先の月を見上げる。

今宵は満月。
あの本の中の月は美しい半月を刻んでいて。

――今も政宗や幸村は、こうして同じように月を見上げているのだろうか。

…二人は自分たちの力を削ってまで、自分のわがままのためにこの世界に帰してくれた。

あっちの世界に居れば、珪たちのことが恋しくて。
この現時世界に戻れば、政宗たちのことを思い出してしまう。

愛華「…私ってば、本当に贅沢、だよね…」

挙句の果てには憧れの氷室先生に、珪とのキスシーンまで目撃されてしまった。
…あれは、氷室先生がくるのを気付いていてわざとけしかけたことなのか。
それとも、まさか本気で自分の事を――……。

愛華「や、やだ、私ってば何考えてるんだろ」
…珪とは生まれてすぐこの葉月家に引き取られて、それから本当の姉弟のように育ってきた。
いつ、どんなときも一緒で、はなれる事はなく。
仕事の関係で家を開けがちな彼の両親に代わって、いつも二人で強力をしながら家事諸々をこなしてきた。

だけど、そうであったとしても血の繋がった実の姉弟ではない。
あくまでこの一つ屋根の下で暮らしているのは、他人の男女。

珪が普段からあまり気持ちを口にしないだけに、特に恋愛に関しては意図を読むことが出来ない。
ましてや、あんなふうに珪から積極的に言い寄られたのも生まれて初めてのことであり。
多感なお年頃だから、と、そう斬り捨てれば楽になるのかもしれないけれど。
自分たちのこれまでの関係を考えたらそうもいかなくて。
愛華「なーんか、一人でウジウジ考えててもしょうがない、か。
でも…氷室先生に珪とのキス見られたのはショックだったなぁ…。
先生は…あの現場みてどう思ったんだろう。
それとも…先生だし、大人の男の人だから何も感じてないのかも。
う〜…それはそれでやっぱりショックだったりして(涙)」
もはや愛華の頭の中をぐるぐる回るのは、決して解けない恋愛という名の方程式ばかりだ。
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