長編小説
□空を見上げれば…
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しばらくして、宗弥の手に硬い物が当たる。
「あった!」
ジャケットのポケットから手に当たったものを取り出し、響に報告した。
「よかったね」
そう言いながら、響はニッコリ笑うと、宗弥に買って貰った鞄を手にする。
「どっか行くのか?」
充電しながら、ずっと放置していた携帯が壊れていないか、確認をしていた宗弥は顔を上げて、聞いた。
この1ヶ月。
どこに行くにも宗弥と一緒にしか行動しなかった響にしては珍しい行動だった。
「…うん…ちょっと買い物」
少し戸惑いながら、響は答えた。
「買い物なら一緒に行くよ」
自分も準備しようと宗弥が自分の上着を手に取ると、響の手がそれを止める。
「今日は1人で選びたいものがあるから」
「ごめんね」っと一言つけたすと、響はゆっくりと玄関へ向かった。
いつもなら喜んで返事をする響だったから、宗弥はよっぽどのことだろうと思い、その背中を見送るしか出来なかった。