長編小説
□空を見上げれば…
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ただぼんやりと蛍光灯の明かりを見つめていると、それまでのことが宗弥には夢だったように思えてくる。
奏がいないことも、響と過ごした時間さえも…
「どうせなら…忘れてしまえばよかった…」
ぽつりと呟く宗弥は眉を寄せ、苦しそうに息を吐いた。
忘れられたなら、こんなに苦しくないのに…こんなに悲しくないのに…。
そう思う反面、奏や響と交わした言葉を、幸せな日々を忘れたくはなかった…。
「おばさん達に電話したら、すぐ来るって…」
静かに扉を開けたのは洸太だった。
「宗弥?」
呼び掛けに反応しない宗弥に慌てて近付いた洸太が聞いたのは、宗弥の寝息だった。
「なんだ…よかった」
安心したように笑った洸太に気付くことなく、宗弥は眠り続けた。