過去版・妄想小説3*

□●One●
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 てとてと、ひょこひょこ。
 キッチンで動くラクスの足元。
 てとてと、ころころ。
 子犬は、いつもラクスの後を頼りなくついていく。
 ラクスはそれを嬉しそうにしながら見つめている。
 子犬は、僕より確実にラクスに懐いていた。それは、僕とラクスが座っているときによく分かる。子犬は、ラクスの膝の中によく入りたがった。

「キラ。」
「ん?」
「キラじゃないですわ、子犬ちゃんのほうです。」
「・・・・・・・・・それ、止めない?」

『子犬ちゃんの髪の色は、キラと似ていますのね。』

 名前を決めるとき、ラクスは子犬に僕と同じ名前を付けた。ラクスのセンスはいつも分からない。その時は曖昧に受諾してしまったけれど、はっきりいって紛らわしくて落ち着かない。

「キラ。お手、ですわ。」
「キラ、ご飯にしましょうね。」
「キラ、くすぐったいですわ。」

 それに、一番は人間である僕の名前が呼ばれないということ。
 振り向いても、ラクスが呼ぶのは犬のキラのほう。
 ・・・・・・・・・・・・・僕は一人、ラクスとキラのじゃれあいを見つめる羽目になった。

                 
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