過去版・妄想小説4*
□●月の小路●
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●月の小路●
「・・・・・・・・・・あ、ここは・・・・・・・・。」
狭い路地の中、見上げれば空は星も無い藍の夜。
ただ空の真ん中、僕の視界には黄金を越えた純白の月が煌々と輝いている。
「夢の中、かぁ・・・・。」
路地のコンクリートにもたれ、僕はたった一人の感覚を噛み締める。
周りには、何もない。
黒猫が一匹でもどこかで鳴いていてくれたら救いにもなるんだけど。生ごみを放り込むポリバケツさえそこにないのが今はどうしてもわびしい。
路地の右にも左にも、続いているのはただの道だけ。
大通りに繋がる様子も、路地の向こうにビルが見えることもない。
たった独りの、世界。
「ラクスは・・・・・・・・もちろん、いないよね・・・・・・・。」
路地の壁にもたれ、ため息をついて空を眺める。
夢に這入る前の、現実の世界を思い浮かべて。