BLEACH
□どうしようもないくらい。
2ページ/3ページ
わかっていない訳など、無い。
ずっと、わかっていた事だ。
あの人の特別になどなれる訳が無い事なんて。
それなのに。
「どうした、ルキア?」
小高い丘の上で、落ちる夕日に視線を注いでいる私に、海燕殿が声をかける。
「…何でも、ありません」
そう、本当にどうもしていない。
ただ、その場にいたのは、ただ目に映った夕日が壮大で綺麗だったから。
真っ赤に染まる太陽は大きくて暖かくて。
あの近くに、あの中にいけたら、小さな冷え切った心は温かくなるのかとか、どうしようもない取り留めの無い事を考えていただけ。
「…お前は、放っておくとどっかにいっちまいそうな奴だな」
「…は・・?」
「…お前はな、自分で思ってるほど一人じゃねぇよ。冷たくもねぇ。」
嗚呼、どうしてこの人は。
「みんなお前の味方だぞ…少なくとも、俺はずっとお前の味方だからな」
大きな掌で頭をぐしゃぐしゃと撫でながら海燕殿が言う。
嗚呼、どうしてこの人は。
一番欲しい言葉をこんなに簡単にくれるんだろう。
どうして こんなにも。
どうしようもないくらいに。
この人が好きなんだろう。
報われる事など無いとわかっているのに。
どうして、どうしようもないくらいに。
愛しく感じてしまうんだろう??
わからない事の中に一つだけわかる事。
どうしようもないくらい、この人が好き。
END