Seyn―詩の部屋―

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05/03(Wed) 16:10
肥え溜めの甲虫
人力飛行機

甲虫が溺れている 沼のような汚物の中を
やがて甲虫は息を荒くしながら 壁に辿りつき
また上がって行く

いつかこの穴から出ていくために
何度甲虫は壁を這って上がって行ったことだろう

甲虫には羽根があるはずなのに 羽根が使えないのは
すでに羽根はいつか固まった汚物の為に
もう開かなくなってしまっているからだ
重たくこびり付いた汚物を乗せて
甲虫は這いあがって行く

一体いつここに堕ちてしまったのか 何故堕ちてしまったのか
甲虫には記憶がない
気が付いた時にはここにいて 汚物の中に居た
したがって甲虫の人生はここから這い上がって行くだけの そのためだけの人生なのだ

いつでも甲虫はいい線までは這いあがる
でもそのたびに 無神経そのものの人間どもは 汚物を投げつけ 真っ逆さまに甲虫を堕としてしまう

肥え溜めの中にも木の根が生えていて そこから樹液を採ることができるものの
もうこの食事にも飽き飽きしている
早く外に出ていきたい

そうやって今日も甲虫は壁を登る
壁を登っていくうちに
いつの間にか人間が上に来ている
人間は無情にも 甲虫に大量の汚物を浴びせ 堕としてしまう
ひとしきり蹲った甲虫は また動きだす

或る時 甲虫はひどく無意味な心理に襲われる
しかし上らないではいられない
重たい甲羅を乗せながら 
やっと辿りついたと思ったその時
何かが上から降ってくる
しがみついて耐えたのもつかの間
ポトリと甲虫はまた堕ちた


2017.5.3

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