novel1-2

□大佐の師走
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『何だこれは』
執務室から司令室に戻って来たロイは、ドアを閉める際、ふと視界に入ったそのドアの内側に貼られたビラに目を留めた。
『歳末助け合い月間?』
白く殺風景な紙に黒い活字で無感情な印象を受ける貼紙。
席について書類の処理をしていたハボックが振り向いて答えた。
『あぁ、ソレ、さっき広報部のやつが来て貼っていきましたよ』
歳末助け合い…具体的に何をしろというのか。
司令部内での話なら部下は上司を、上司は部下を労れという事か。
あるいは街中で腰の曲がったお婆ちゃんの荷物を持って差し上げろという事か。
意味が解らないが、だから余計に自分には関係のないことだとロイは自分の席について回転椅子を座る為に回した瞬間には既に『助け合い』の言葉を忘れていた。
そして、座ろうとして机に置かれていた冊子に目が止まった。
“中央司令部・大総統府月報。1月号”
これは、所謂普通の企業であれば社報に当たる物。
1月号とあるように、月刊で発行されており、中央、南北東西各司令部で別々に編集、刷られている。
が、中央の場合は大総統府との繋がりが濃い為、同じ冊子になっているのだ。
内容は、全軍共通の連絡事項ページから始まり、半分以上は各司令部で編集された物だった。
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