novel1-2

□St.Valentine(Jan side)
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毎年来るこのイベントが、こんなにも待ち遠しく感じた事はない!
何故なら今年は確実に1個は貰えるあてがあるんだから。

去年までは、大佐が貰ってくる、あるいは勝手に送りつけられてくる山積みのそれを、いやって程に見せ付けられて、貰ってもせいぜい1桁以内のオレは複雑な想いで眺めていた。

きっとあれをくれた女の子達の見ている大佐は、立派な肩書きを持つ軍人であり、悪党どもからも一目置かれる国家錬金術師であり、眉目秀麗、気品があって紳士的、まさに非の打ち所がない姿に見えているのだろう。

しかし!
オレは…いや、オレ達は知っている!
あの人が実は、そんな褒められた人格の持ち主ではないことを!

大佐に惚れたと瞳を潤ませている女性達は皆、騙されているのだ。
だから大佐にあれを寄せる女性達は皆、あの人の本性を知らない訳で、少しばかり哀れな気もする。
いや、知らぬが仏か。
世の中には知らない方が幸せな事もある。

だから、オレは一概に羨ましいと思うことはなかったけど、外見内面、嘘偽りの姿はこの際関係なく、数だけ見てやっぱり太刀打ちできない大佐を妬ましく感じていたことも事実。
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