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□【名探偵ロイ】第2話、後編。
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『ここも…違う』
条件に当てはまる学校を回る事5つ目。
最後の学校に辿り着いてみたものの、どこにも少女らしき姿はない。
―どういうことだ?
確かに、全て煙突の見える学校だったしそれぞれのそれらしい倉庫からも煙突ははっきり見えていた。
条件を満たす中でも見つからない。
何かが間違っているのだろうか。
全てが振り出しに戻ってしまったような感もあるが、思考を止めてしまえば終わりである。
ロイは、再び疲れ果てた犬の綱を引いて学校の敷地を出てから市街地へと歩き出した。
ここからも見える、工場の煙突。
あれでないとしたら…。
と、ロイはその方向に大きなビルが見えるのを確認した。
それはかまぼこ板のように平べったく、ロイの見える方向からは丁度斜めに位置していてかなり薄っぺらく見えていたのだが…。
―あれは…。
もしかして。
ロイは閃くままにそれを確認しようと再び番犬の背に跨り駆け出した。
巨大なそのビルを真横から眺める位置に走りこんで、そして見上げてみて確信した。
―このビルを横から見て、煙突と間違えたんだな!
厚みのないビルを真横から見ると、煙突のように一本の棒のような直立したシルエットだけが浮かび上がる。
周囲はもう既に街灯が眩しく感じる時間だ。
ビルの側壁と煙突を見間違うのは無理もないといえる。
―この近辺でこの角度のビルを見れる学校は…。
思い当たる学校がひとつだけある。
ロイは、そのまま番犬を走らせ、少女の監禁されている学校へと向かった。
★☆★
内部から男の声が聴こえる。
『解ったな?金はセントラル公園のベンチに置け!言っておくが、サツの気配がしたらガキはその場で殺す!!』
間違いない、犯人だ。
恐らく、電話をしている相手はまだ自宅にいる主人だろう。
『あぁ、金が入れば返してやる』
きっと、娘を返してくれと泣き付いているのだろう。
それでも、男の声には非情にも何の呵責も感じられなかった。
ピッと、電話を切る音がする。
『これで商談成立。お前の役目ももう終わりだ…』
ロイは、僅かに開いた倉庫のドアの隙間から精一杯中を覗いていた。
男の傍にはロープで身体を縛られ、口をガムテープのようなもので塞がれた少女が転がっている。
『悪いが死んでもらうぜ…。お前には顔を見られちまったからなー』
言いながら少女の方をゆっくりと振り返った男の手には小型ナイフのようなものが握られていた。
高い位置にある明り取りの窓から差し込む月明かりが、そのナイフの刃に反射してギラリと銀に光る。
『んー!!んー!!』
女の子は、恐怖に顔を引き攣らせ涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら身を捩って逃げようと試みる、が頑丈に縛られたロープは子供の力で僅かにも緩まる事すらなかった。