【オハナシ】
□太陽の匂い月の香り
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抱きしめた君は月の香り
その魔力に酔わされている
「貴様は太陽のようだな」
「あぁ?」
唐突な彼女の言葉に、怪訝そうに彼は振り返る。
深夜。魂葬帰り。死覇装姿の彼と、制服姿の彼女。
「何だイキナリ。髪の色の話か?」
「そうではない。……貴様全体の事だ」
闇の中。黒装束。死者と触れ合っている時でさえ。
この男からは、強いエネルギーが溢れ出す。
与えられたのではなく、彼自身の内から生み出される、
強く、眩しく。ともすれば直視できない、命の光。
その激しい熱に焼き尽くされていく自分が居る。
「だったら、お前は月ってとこか?」
真昼の学校。制服。生徒たちに紛れていても。
この女からは、闇の魔力が漂っている。
疲れた命に安らぎを与え、時には死を運び、
微かに、妖しく。本能を刺激する、誘惑の光。
その美しい罠に堕ちていく自分が居る。
「随分と気取った事を言うな」
「あぁ!?てめぇが言い出したんだろ!?」
少し小馬鹿にしたような言い方に、彼は彼女を睨みつけたが。
闇の中で妖艶に微笑む彼女を、気が付けば抱きしめていた。
──ほら、やっぱりお前は、月のようだ。
* *
牢の中で、彼女は目を閉じる。
もう2度と見ることの叶わぬ姿が、まぶたの裏に浮かび上がる。
強い光を直視した後、視界に残る残像のように。
──ほら、やはり貴様は、太陽のようだ。
抱きしめた君は太陽の匂い
その引力にとらわれている
*END*
***コメント***
先にサイト名を思い付いて、それにつられて出来た話です。
出だしは同じで、色んなバージョンの話を思い付いたのですが、(もっと暗いものから、Hなものまで(笑))
サイト名と同じ話があまりクセがあるのも嫌だな、という事で一番抽象的で無難な話に落ち着いてしまいました。