【オハナシ】
□春の嵐
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「な、何なのだこれは!!台風でも来たというのか?」
「こんな季節に台風上陸なんてされてたまるか!!これは俗に言う──」
“春の嵐”ってヤツだ。
* *
学校帰り。一護とルキアは暴風雨と戦っていた。
ついさっきまではこんな状態ではなかったのだ。
学校を出る時は、確かに少々強めの雨は降っていたものの風はたいして無く。
いつも通りに傘を差し、のんびりと歩いていたのに。
どんどん酷くなる雨と風に、気付けば傘をほとんど真横にしているような状態で。
傘や地面を叩きつける水音と、耳元で轟々と唸る風音に、相手の声さえ聞き取りにくい。
「おのれ!!酷くなるなら酷くなると、事前に予告しろというのだ!!」
「そういう事は気象庁にでも言ってくれ」
下らない会話で気を紛らわせながら、家へと急ぐ。
強い向かい風が、2人の傘にまともに当たる。
一護はともかく、体重の軽いルキアにこの暴風はキツい。
何度も傘ごと押し返されそうになる彼女の歩調はフラフラと、まるで千鳥足のようだ。
「オーイ、吹き飛ばされんなよ」
そんなルキアを見て、少し意地悪く笑いながら一護は言う。
小バカにしたようなその言い方にムッとしたルキアは、大声で
「そんな訳なかろう!!」
と反論したが。
その、一瞬の彼女の気の緩みに合わせたかのように。
一際強い風がルキアを襲った。
「きゃあ!!!!」
悲鳴と共に、バサバサッと激しく布がはためくような音がして。
力負けした彼女の傘は、風に煽られて思い切り裏返り。
彼女自身もよろめいて、2・3歩後ずさった。
「ルキア!!大丈夫か?」
驚いて、一護が駆け寄る。
さすがに飛ばされはしなかったが、一瞬で傘は変形してしまい、ルキア自身は見事にズブ濡れだ。