【オダイ】
□「猿と煙とナントカは…」
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気分が晴れない時は、高い所に行きたくなる。
煩わしいモノから少しでも離れたら、心が軽くなりそうで。
──実際は、そんなに簡単ではないのだけれど。
* *
木々の隙間から見る青空はとても綺麗だ。
すぐ近くで小鳥のさえずる声もする。
たまに風が吹けば、ザワザワという音に合わせ、自分の腰掛ける枝も僅かに揺れる。
放課後の裏庭、お気に入りの木の上で。
「──気持ちよいな…」
ひとりきりだというのに、わざと声に出して言ってみた。
自分に、言い聞かせるように。
しかし駄目だ。どうにも気分は晴れない。
──無意識に、軽い溜め息。
原因は分かっている。
……ただの、自分の我が儘だ。
「ルキア!!」
不意に足元から名前を呼ばれ、心臓がビクリと跳ねた。
顔など見なくても分かる。聞き慣れた、一護の声。
……正直、今一番会いたくない人物だった。
「やーっと見つけた。オイ、降りて来いよ」
一護は言う。
しかし私は無関心を装って空を眺めたまま、下を見る事はしなかった。
「オイコラ!!聞こえてんだろ?無視すんな!!」
「…………」
返事をしない私をどう思ったのか。
一護は暫く沈黙したが。
いきなり。
「猿と煙とナントカは…」
──!!!!!!
「……高い所が好きなんだよなァ…」
「貴様!!!!!!私が莫迦だと言いたいのか!!!!」
勢いよく下を見下ろし、大声で叫ぶと。
「やっぱり聞こえてるじゃねえか」
「………う…」
……しまった。
まんまと一護の策にはまってしまった…。
気が付けばすっかり奴と目が合ってしまっていて。慌ててまた、目をそらせる。