【オダイ】

□甘い、苦い、甘い。
1ページ/6ページ

ケンカをした。

よりによって、こんな日に。


   *   *


「姐さん!!今日は何の日か知ってますか?」

学校を終えて帰ってきたルキアに、待ってましたとばかりにコンが言う。


「煮干の日」

「そうなんスよ!!ニ(2)ボシ(14)のゴロ合わせ──
じゃなくて!!!!バレンタインっすよ、バレンタイン!!!!」

興味無さそうに前を通り過ぎるルキアに向かって、コンは懸命に叫んだ。


「オレ、姐さんからチョコ貰いたいなぁ〜〜」

そう言って、浮かれ調子でルキアの足元に纏わりつくコンは。
実は今の彼女の機嫌が最悪だとは気付いていないようだ。


「…………」


立ち止まったルキアは、暫く黙ってその様子を眺めていたが。

ひとつ溜め息をつくと、ゆっくりと鞄を開き。
中から可愛くラッピングされた小さな箱を取り出して、コンに手渡した。


「ホラ、貴様の分だ」

「え…、え!!マジっすか!?」


自分で言っておきながら貰えると思ってなかったのか、コンは興奮気味だ。
食べれるのかどうか知らないが、大喜びで浮かれている。


(──ついでだったからな…)

そんなコンを見ながら心の中で呟くと、ルキアはそっと鞄の中を覗く。


綺麗に包装された、もうひとつの箱。

……一護のために買った、チョコレート。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ