【オダイ】
□甘い、苦い、甘い。
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ケンカをした。
よりによって、こんな日に。
* *
「姐さん!!今日は何の日か知ってますか?」
学校を終えて帰ってきたルキアに、待ってましたとばかりにコンが言う。
「煮干の日」
「そうなんスよ!!ニ(2)ボシ(14)のゴロ合わせ──
じゃなくて!!!!バレンタインっすよ、バレンタイン!!!!」
興味無さそうに前を通り過ぎるルキアに向かって、コンは懸命に叫んだ。
「オレ、姐さんからチョコ貰いたいなぁ〜〜」
そう言って、浮かれ調子でルキアの足元に纏わりつくコンは。
実は今の彼女の機嫌が最悪だとは気付いていないようだ。
「…………」
立ち止まったルキアは、暫く黙ってその様子を眺めていたが。
ひとつ溜め息をつくと、ゆっくりと鞄を開き。
中から可愛くラッピングされた小さな箱を取り出して、コンに手渡した。
「ホラ、貴様の分だ」
「え…、え!!マジっすか!?」
自分で言っておきながら貰えると思ってなかったのか、コンは興奮気味だ。
食べれるのかどうか知らないが、大喜びで浮かれている。
(──ついでだったからな…)
そんなコンを見ながら心の中で呟くと、ルキアはそっと鞄の中を覗く。
綺麗に包装された、もうひとつの箱。
……一護のために買った、チョコレート。