【タカラモノ】
□fine snow
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夜のうちに雪が、降った。
降る事は珍しくないのだが、積もる事は滅多にないから、朝起きて軽く驚いた。
***
空気がぴんと張り詰めたような、けれどどこか清々しい冬の朝……に切り込む騒がしい声。
「一護!雪だぞ!」
「……」
「外に出て」
「やだ」
早朝から、ルキアは一護の布団を捲り上げるという奇抜な起こし方を敢行した。
その所為で少々不機嫌になった一護は、無邪気なルキアの提案を、「やだ」の一言で片付けた。
「…………」
あまりにもあっさりと返されて、ルキアは、しばし言葉を失うが。
「まっ、まだ何も言っておらぬだろうが!」
口を尖らせて一護を見上げる。
彼は、欠伸をしながらルキアを見下ろした。
「……言ったじゃねーか。お前の事だ、“外に出て”…アレだろ、雪合戦とか雪だるまとか…」
「ゔっ…ι」
一護の方がどうやら優勢のようだ。
「外さみーし、ガキの遊びに付き合うよーな余裕もねえ。俺はパス」
「〜〜ッ一護のたわけっ!!」
どうあっても外に出る気がないらしい一護に、ルキアは啖呵を切ると、コートを引っ掴んで出ていった。
「……」
途端にしんと静まり返る一護の部屋。