GIFT

□夜瀬紀李奈様
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「赤屍、あんた空見たことある?」

こんな何気ない一言に、貴方が気にするなんて思ってもみなかった。



『night sky...』



寒さがまだ残るこの季節。
空を見上げればまだ冬模様で。
息を吐けばそれは白い煙となって風に流れて行く。
そんな中の仕事帰り。
卑弥呼と赤屍は、先程ドライバーの馬車と別れ、二人で夜道を歩いていた。
東京の夜景は眩しすぎて。
二人は路地裏の更に暗い道を並んで歩いていく。

卑弥呼は、少し早歩きすると赤屍の前まで行き、立ち止まった。
赤屍は卑弥呼が前に来てつられて立ち止まる。

180もある身長なのに線の細い体。
赤屍の顔を覗こうと顔を上に上げて目を細める。
暗闇に目が慣れた卑弥呼はうっすらと浮き上がる白い肌に不思議そうな顔をした赤屍を見付けて。

「どうしました?卑弥呼さん」

暗闇の中で目があった菫色の瞳。
その背には星空を背負っていて。

「ううん。なんとなく」

こう答えると更に不思議そうな顔が深みを増して。

そして口にした、何気無い一言。

「赤屍。あんた空見たことある?」

暫く沈黙が流れて、赤屍は静かに口を開く。

「空……ですか?」
「うん。空」

赤屍は、真っ直ぐに見つめる卑弥呼から目をそらさずに首を傾げる。

「急に……どうしたんですか?」

訳が分からない、と言った様に卑弥呼を見つめ。
卑弥呼は赤屍の顔から目を離さずに空を指差して。

「赤屍と目、合わせたら絶対に空が視界に入るし……」
「あんたは皆と目合わせる時ずっと下向いてるから」

赤屍はそう言われ、卑弥呼が指差した方を目線で追った。
東京の空は濁ってるけど……確に空が見えて。
この路地裏が暗いせいか星も見える。
「クス……」
妙に幼い卑弥呼の言動に思わず笑いが溢れた。
それに気付いた卑弥呼は我に返った様に赤屍を睨む。

「何よ」
「別に?」
軽く笑って答えると卑弥呼の怒りは上がるのは分かっていて。
それでも尚そうするのは悪戯心か好奇心か。

はたまた天然さ故に出る行為か。

暫く無言で二人は夜の空を見上げる。
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