新旧パプワ夢

□ナヤミ
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「…あ。来てくれはったんどすか。」
「なんなの、こんな夜中にいきなり。ざわざわ来てやったんだから、ありがたく思ってとっとと用件述べやがれネクラ。」
「そ、そないな言い方せんでも…。…でも、どうしても話したい事がありまして…。」

火の玉について行くと、普段から人通りがほとんどない階段の踊り場へと行きついた。
そしてそこには…案の定アラシヤマの姿が。

「で、その話しってのは何?」
「……お師匠はんと、あんさんの事どす。」
「…アラシヤマもしつっこいねぇ。その話しはもう終わったでしょ。」

アラシヤマがその話しのために呼び出した事は、なんとなく予想はしていた。
それでも胸の奥が痛む。それを悟られないように精一杯言葉に冷たさを詰め込んだ。

「でも汚物子はんはまだ、お師匠はんのこと…。」
「うっさいネクラ!私はもう決めたの。…マーカーさんが、私の事好きじゃないんだから…。」

そう言い終わるか終わらないかの時、視界がかすかにぼやけた。
慌てて無理矢理あくびをして、目をこすって液体をぬぐう。

「用件はそれだけ?だったら、私もう行くよ。」
「…待っとくれやす。あと一つ、大事な話しがありますのや。」
「なに?とっとと終わらせ…ぎゃあ!?」

アラシヤマに背を向けて歩き出した私の腕がいきなり後ろに引っ張られた。
とっさの事でバランスを崩して倒れそうになったが、なぜか床にぶつからずに温もりに包まれた。
………えっ!?!?こ、ここここ…この状況って…私、アラシヤマに…だ、抱きしめられてるぅ!?

「ちょ、ちょっとアラシヤマ!?何やってんだよ、離…。」
「汚物子はん。お師匠はんのかわり、わてじゃ…ダメどすか。」
「…え?」
「わてやったら、汚物子はんに寂しい思いは絶対にさせまへん。これは絶対保証します。…わて、あんさんの事が………………うわっちぃぃいい!!」
「は?」

いきなり奇声をあげたかと思うと、アラシヤマは床を転げ始めた。
…なんなの?いっくら私だって、次に来る言葉は予想できたよ?なのに…え?
それは京都の方言かなんかですかい!?あ!?
京都人じゃない私には理解できませんよ!?

「あちっ!熱いどす〜〜〜〜!!!!」
「熱い…?あ、アラシヤマ…?」

尋常じゃないアラシヤマの行動と、その言動から少し心配になってゆっくりと近づいてみる事にした。
すると、ちらりとだが、アラシヤマの背中から赤い炎が見えた。

「えっ!?ちょっ…!だ、大丈夫!?」

いくら体から炎を出せるアラシヤマでも、自分以外の炎は普通に危険…!
私は慌てて火を消そうとアラシヤマに駆け寄ろうとした…が、その直前に下の階段にいた人物に気付いてしまった。

「ま…マーカー…さん…?」

私は驚きのあまりアラシヤマの事も忘れてマーカーさんを見つめ、その場に立ち尽くしてしまった。
当のマーカーさんは相変わらず無表情に私を見て、近づいてくる。
月の光で少し影が出来たその顔は、恐いような綺麗なような…。
ポカンと見惚れている間に、マーカーさんは私の目の前に立っていた。
そして無言のまま私の手首をつかむと、そのまま引っ張って歩き出してしまった。

「え、ちょっ、ちょっとマーカーさん?どうしたんですか?マーカーさん。」

何度呼んでも返事は無く、ただただ私を引っ張るのみ。
さっき無表情だった事もあり、その無言が怒りのような気がしてきて黙ってついて行く事にした。
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