自由人夢

□隅に薄い黒いの
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「ったく、本当になんなんだよあんのネクラはーッ!!」
「私に八つ当たりしないで下さい…。」
「他に誰に八つ当たりしろって言うのよ白龍さんッ!」
「兄者を殴るなり蹴るなり好きにしたらいいでしょう。」
「あの馬鹿呼び出そうにもケータイに出ないし!」
「ああ、今二日酔いで寝てましたっけ。」
「おっさんが…。」
「なんでもクリスマス・イヴの前夜祭とか馬鹿な事をのたまってましたね。」
「ああ、だから昨日着歴あったの。へぇ。なるほど。この三日間でアル中でぶっ倒れればいいのに。」

昼休み。
忍が作ってくれた美味しそうなお弁当に、箸本来の挟んで掴むという使用方法を無視しし、弁当箱の底に穴が開くのではないかと言うほど強く突き刺しながら中身を口に
運んで行く。
だけどイライラは一向に収まらず、お弁当を食している口から暴言。

「仕事なんだからしょうがないじゃない!クリスマスったって平日なのよ!イヴだめでもクリスマスは大丈夫って言ってんじゃない!てか言いたい事あるならハッキリ言い
なさいよ!あーもうイライラするッ!!!」
「分かりましたからもう少しボリュームを下げて喋ってくれませんか…頭に響きます。」
「アンタもなんだかんだで飲んだの…。」
「仕方ないでしょう、無理矢理付き合わされたんですから。それと言っておきますが二日酔いではないですよ。何故か風邪っぽくて…。」
「そりゃ飲んでまた脱いだからだよ!」

私の周囲じゃ一番マトモでもやっぱりどう抗ってもあいつの弟か…。
こっちこそ頭が痛いわ…。

「寂しいんでしょう。」
「…は?」
「だから、彼は寂しいんじゃないんですか。」
「…寂しくてもさぁ、大人なんだからクリスマスイヴを一緒に過ごせない位で…。私だって…そりゃあ、寂しいと思ってんの我慢してるんだからさ…。」
「そうではなくて。」
「ん…?」
「一緒に過ごせない事もそうなんでしょうが、発言からして…寂しいと思ってるのが自分だけのようで寂しかったのでは?」

……。

「馬鹿じゃないの…そんな事位で。二人揃って甘えてちゃ駄目でしょ。私は、忍が甘えてくるからしっかりしてんのに。私が冷たくするのなんて今更じゃない。それにいつも
私の考え見透かしてニヤニヤしてるくせに。なんなのよ、…ったく…。」
「…汚物子?」
「やっぱりリュウじゃなくて白龍さんに電話して良かった。」
「まあそうでしょうね。」
「お正月は忍連れて飲みに行くから。」
「はい。では私は寝かせてもらいますよ。」
「ん。お大事に。…ありがと。」

…はあ。
卵焼き美味しい…。
口の中の甘い卵焼きがなくなって、一口お茶を飲んで、再びケータイの操作。
電話帳から目当ての名前を探し出して…ポチっとな。

「もしもし?急で本っ当に申し訳ないんだけど…――」
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