自由人夢

□隅に薄い黒いの
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あー…さっむい。
もうとっくに良い子の寝る時間は過ぎてる。この時期のこの時間は本当に寒い…。
周りが静かな分、たぶん余計に寒く感じるんだろうな。
家の前に立つと…やっぱり真っ暗。
拗ねて寝てるのか。それとも拗ねて真っ暗の中膝抱えてるのか。
どちらにせよご機嫌はよろしくないだろうね。
私は今朝とは間逆にそっと、そぉっと鍵を回しドアを開けた。
中は真っ暗で何も見えない。
ていうか、なんで外よりも中の方が寒く感じる?
いやわかってるけどね。忍の負のオーラと、それに引き寄せられた友達のせいだって!
差し込む月明かりで少しずつ部屋の中が分かってきても忍の姿が見えない。
布団が敷かれてないから、寝てはいないみたい。

「忍ー…?」
「お帰りなさい。」
「うぉおいう!?」

思わず変な声が出てしまった…。
だ、だって足元で声がしたもんだから…!!
薄いなんてレベルじゃない!もうこれ、完全に闇に溶け込んでるよこいつ!
バックンバックン言ってる心臓を落ち着けつつ、いつも通りいつも通り…。

「良い子は寝てる時間だよ。」
「……。」
「シカト?」
「……。」

返事がない。
でも、私の足にしがみ付く小さな物体。

「…忍。」
「…なに?」

電気のスイッチを押すとパッ、と部屋が明るくなる。
付けた私自身も急な明かりに視覚が少しおかしい。
けど、しっかりと忍の驚きの表情は確認できた。
瞳を大きく目を開いて、口を少し開けて。私をぽかんと見つめるちみっこ忍。

「メリークリスマス!」

私の言葉にも目をパチクリさせている。
ここまで驚く忍を見るのも珍しいかも。

「汚物子…その格好…?」
「バードさんに頼んでパーティーグッズショップで買ってきて貰った。まぁ、それで買いに行かされたのはタイガーさんらしいけど。んで、こっちもバードさんに頼んで作ってもらったケーキ。」

今の私の格好。
それはサンタクロースの衣装をスカートにしたもの。
お昼に(どうせ彼女いなくてクリスマスイヴも暇してる)バードさんにケーキを作って欲しいと頼んで、まぁついでとこれも一緒にね。

「ケーキ…?」
「サンタから良い子へのクリスマスプレゼントだよ。」

頭を撫でながら忍にケーキの箱を渡した。
やっとこの状態を理解したのか、口の端が上がっていく…。

「ありがとう…汚物子…。」
「んーん。……んー…。」
「うん…?」

不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。
あー…うー…やっぱこれは私のキャラじゃないんだけど…あー…もう!
柔らかなほっぺたを包む…と言うには少し乱暴に押さえ、何か言おうとしたのか半開きの唇に自分の唇を押し当てた。
ほっぺたに、負けず劣らず…柔らかかった。

「私だって…寂しくなかった訳じゃないんだから。」

顔を離してそう呟くのが精一杯。
なんてこっぱずかしいことしてんのよ、わた…あぁ!?

「愛してる…汚物子。忍すごく、嬉しいよ…愛してる…。」

ちゅ、とまた一瞬触れ合う唇。
心が温かくなり、顔は…熱くなる。

「…マセガキ!ほら、さっさと食べてさっさと寝る!」
「うん、汚物子を。」
「違うケーキを!この変態が!」

引っ付く忍を邪険にしながらケーキを食べる準備をする。
もうこんならしくない事するもんか!!
…たまにしか。

「ねぇ…汚物子。」
「なによ。」
「今日は黒と白の水玉なんだね…。」
「ッ!?」
「ふふふ…。」

ああ、さっき足元に引っ付いてたねぇ。
うんスカートだもんね。見えるわねぇ…。

「このエロガキがぁ!もう寝る!明日は竜人界でクリスマスパーティー行って来る!アンタは友達と過ごしてろ!!」

うん忍だもんね。切るわねぇ…。
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