新旧パプワ夢

□チョウ・上
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春と夏と秋と冬を二人で
他の誰も愛さぬように。

春と夏と秋と冬をこうして
他の誰も見えないように。

私はあなたを探している。
私はあなたを愛している。





「…では、お願いしますね。生物委員さん。」
「はい。」

ガンマ団士官学校入学から一週間。
同じ新入生の一人によって校舎を全焼されたけど、ガンマ団の力とは凄い物で…早くも新しい校舎が出来上がった。
…でも、なんかねぇ。
殺し屋の士官学校だから、そりゃもう、毎日厳しい特訓続き!!と、思いきや。
意外にも普通の授業とかもちゃんとあったりして……正直、安心したけど拍子抜けって感じ。
しかもちゃんと委員会なんてものもあるし。
結構庶民的なんだなぁ、殺し屋も。
んで。私は生物委員とやらになった。
ぶっちゃけ、どの委員会に入ろうともサボる気満々だからどれでも良かった。
…のに。その担当の先生が運悪く、あのいかにも腹黒そうな高松とか言う奴だった。
あーゆーのは敵に回さない方がいい事を10代前半にして知っている私は胸の奥底で悪態を吐きつつも、素直に仕事をする羽目になった。
そして、今頼まれた仕事と言うのは…。

「この一年間、クラスで世話をする事になった生き物の世話…。」

めんっどくさっ!!
朝昼晩の三回、ご飯持って行ってあげなきゃいけないなんて…。
他の仕事はしなくていいって言われても…まだ他の仕事やってた方がマシかも。
あ〜…ツイてない…。
しかも、地下牢にいるって…どんな生物よ!?
まさか……まだ新入生で、女の子な私に獰猛な猛獣とかの世話をさせる気か!?
…あの垂れ目腹黒男ならやらせかねない…ッ!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…。
ガンマ団に入って仕事中に死んだならまだしも、委員会の仕事で死んだなんて恥ずかしすぎる!
ハァ…こんな事なら、心戦組に入隊希望すれば良かった…。
なぁんて溜息吐いてる間に…到着。
春の陽気なんて全く感じさせないような、薄暗くて肌寒い地下牢。
もう一度溜息を吐いてからガチャリと預かった鍵を開けた。
軋む音を立てながらドアを開ければ……うん、思い描いていた通りの牢屋。
ずらぁりと鉄の棒が並んでます。
ん〜…いない。奥の方にいるのかなぁ?
足音がやたら響いて、それがちょっと怖かったけどゆっくり注意しながら進む。
…そういえば、鳴き声とか全然しないなぁ。寝てるとか?
だったらいいのにな…………あ?…あれ?目の前はもう、壁。
なのに、猛獣の姿なんてなかったような…?

「おっかしーなぁ。」
「あ…あ、あの…。」

……………………………………………………………………………………………………………………え…。
背筋に冷たいいやぁな汗が伝う。
い…いいいいいいい今、だ、誰…誰かの声が…。
誰かが入って来たなら足音で分かるはず。
その足音は、なかった。
じゃあ…今の声は……な、なんですか…?
幽霊とかそれ程怖いわけじゃないけどさ、だけど………………やっぱ怖いッス。
食事の乗ったお盆をぎゅっと握り、ゆっくりと声のした方を向くと…。

「…………失礼ですが、生存してらっしゃいますか?」
「へ!?そ、そら生きてますわ!」

幽霊にしろ、生きてるにしろこの聞き方はないだろ、と言ってから思った。
だって…マジでビビッてて、頭の中真っ白だったんだもん…。
…それにしても。
今私の目の前にいるのは、獰猛な猛獣とはどうやっても結びつかない。
片目を前髪で隠した私と同じ位の年齢の控えめな男の子。
ガンマ団にいるだけあって、やっぱり美少年。
あの言葉遣いからして…京都の人?京美人?

「あ〜…ごめん。それよりさ、ここに獰猛な猛獣…じゃなくても、なんか生き物いない?」
「生き物どすか?おりますえ。」
「え?どこ!?私、それを探しに…。」
「わ、わてのお友達の…トガワくんどす…。」

モジモジと照れながら、この人が手を向けた先には…………………あ?

「何もいないじゃん。」
「なっ!何失礼な事言うてますんや!わての、お…お友達に!」

なんでいきなり怒り出すの!?
しかも、さっきからなんか“お友達”を強調してるし!

「ほんま、さっきから失礼なお人どすなぁ…。ねぇ?光り苔のトガワくん。」
「ひ…光り苔…?」
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