新旧パプワ夢

□チョウ・中
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春と夏と秋と冬を過ごした
なぜかいつもふりむきながら。

春と夏と秋と冬をこうして
暗い森を彷徨いながら。

私は糸紡いでいる。

私は一人血を流している。






ガチャリ

地下牢の鍵をしっかり閉める。
あ〜…寒い。心も体も寒い寒い。
まるであの桜みたいだよ、あたしゃ。
花もなければ葉っぱもない。寂しいったらありゃしない。
それもこれも…今会ったばっかのネクラのせいだッ!!
なんと、私はあのネクラの世話係りにされたせいで…長期休暇もガンマ団に残る羽目になったのだ!
あぁ…夏休みを思い出すと泣けてくるよ。
皆が実家に帰って家族団欒、海とか行ってる時に…私はネクラと地下牢!!
しかも、あんの蛇男が遠征から帰る度にここにやってきては、ツラツラと嫌味並べてきやがるし!!
あ〜…ムッカツク…!!
…ハア…クリスマスも年越しもここか…。
居残り組みはガンマ団のクリスマス会とかに参加させてもらえるらしいけど…やっぱ寂しい。
ミヤギとトットリは帰っちゃったし…あ、でもシンタローとグンちゃんはいるんだ。…だけど、やっぱり寂しい!!
もうちょっとアラシヤマにグチグチと文句言ってやればよかった。
ブツブツとそんな事を愚痴りながら自室に行こうと歩いていたら…外に、見覚えのある人影が。

「マーカーさん?」
「…お前か。」

独り言みたいに呟いたつもりだったけど、相手に聞こえちゃったらしい。
片手に何やら紙袋を抱えて、相変わらずの無表情で私の方を向いた。
その表情・態度・一年中変化なしの胸の辺りが大きく開いた服装に寒々しくなってきた。
声出すんじゃなかったと後悔したその相手は、アラシヤマの師匠で特戦部隊隊員である蛇男…改めマーカーさん。
前までは“様”をつけて呼んでやってたけど、その事に対して本人から、
『気色が悪い。』
と、無表情のまま言われたのでその瞬間からやめた。
思い切って呼び捨てで呼んでやろうかとも思ったけど…燃やされるのが嫌なので自制。

「丁度いい。ついて来い。」
「はあ!?ちょ…なんなんですか、いきなり!」
「どうせ暇だろう。実家にも帰らないんだからな。」
「誰のせいだと思ってんですか!?」
「アラシヤマだ。」

お前の弟子だろ、少しは責任感じろ!
あまりに素晴らしい速さで返事され、そう怒鳴る気も失せた。
わざとらしく大きく吐いた溜息もシカトし、マーカーさんは私の手を握ったまま引き摺るように連行して行った。
…手、あったかい…。
思いっきり血の通った人間として見てなかったので、この温かさはビックリ。
そういえば、お父さん以外の異性と手を繋ぐなんて…初めてかも。
あ…こんな事考えるんじゃなかった。ちょっと恥ずかし

「いっ!?」
「何をボーっとしている。」

クッ…思いっきりマーカーさんの背中に激突して、鼻が痛い…。
そりゃ、私がちょっとボーっとしてたのもあるけど、いきなり止まらないでよ!
口に出すと嫌味が煩そうだから、目で訴えてみる。
…思いっきりシカトされた…。

「汚物子。」
「…なんですか。」
「枯葉をここに集めろ。」
「……人を無理矢理連れて来て、更にはいきなり命令口調ですか。」
「早くしろ。」

こっちの文句も聞かずにまた命令かい!
そう言いたかったけど、ドッカリとベンチに腰を下ろして私を見下している。
離された手が急に寒くなってきた。
…このまま逃げたら後ろから容赦なく炎が飛んでくるんだろうな…。
冷えた体が燃え上がるのを想像して、聞こえるように舌打ちしてからノソノソと枯葉集めを始めた。
しっかし…なんで枯葉なんか集めなきゃいけないのよ。
たくさん疑問と文句があるけど、どうせ聞いたって答えてくれなさそうだな。
しかたなくいつも此処、士官学校の裏庭掃除で使う箒を持って来て黙々と作業。
ただでさえ人のいない中の余計にいない場所。
…余計寒ッ。
そんなこんなで、いつの間にか私前には枯葉が積まれた。

「これだけあれば充分だろう。」
「ねぇ、マーカーさん。これから何するんですか?」
「…これだ。」
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