自由人夢

□とらいあんぐる
1ページ/5ページ

私には義兄がいます。
でも、それを知ったのはつい一年ちょっと前。
その義兄はお義父様を真っ二つにしたり、七世界を全破壊したり…など。
ちょっとひねくれて“ワル”だった頃もあったけど…今は違います。
性格と口の悪さは健在だけど、実はとっても優しかったりします。
強くてカッコ良くて、素直じゃないけど優しい義兄が私はとても好きです。
……でも、義兄よりももっともっと、好きな人が…実はいます。
その人は……義兄ととても仲の良い“友達”なのです。



「ねぇ、クーちゃん。」
「その名で呼ぶなと何度言ったら分かる!!」
「なんで〜?お義父様がせっかく付けてくれた、いいニックネームだと思うよ。…あ、やっぱり“クーりん”のがいいんだ〜!」
「違う!殺すぞ!!」

そう言ってニラんできてるけど、今まで私にはアイスボンバー一つ打った事がない。
…あ。でも、“こめかみグリグリ”は痛い…。

ここは天人界の入り口。
私の義兄…海人界の英雄で竜人界のプリンス、クラーケンはよくここに修行しに来ている。
そして私も、それによくくっついてきている。

「それよりさ、クーちゃん。」
「……………………………なんだ。」

不機嫌そうに答えてるけど、結局は呼んでも怒らない。
やっぱり優しい。

「今日、なんの日か知ってる?」
「…今日…?」
「あ。やっぱり知らない?そーゆーの全然興味なさそうだもんねぇ、クーちゃん。」
「無償にむかつくぞ。」

そう言ってニラんでくるのも、いつものことで…。
昔はそれで体が凍りつく思いをした人もいたんだろうけど、私には効果なし。
だって、殺気がほとんどないし。

「そう怒らないでよ。クーちゃんは余計な事には興味持たないんじゃないかな、って思ったの。実際そうでしょ。」
「……。」
「…でね。今日は2月14日は聖バレンタインデーって言って、本来ならば親しい人達にお菓子を皆で交換し合う…って感じの行事なんだけど。チョコレート会社の策略で、いつの間にやら女の子が好きな異性にチョコをあげる日になった、というなんとも陰謀めいた日。」
「…………よく分からんが、曲解してないか?」
「いえいえ、まさか。」

うん。ちょっといろいろと言葉を付け加えたりしてるけど、本質的にはあってると思う。

「それで、いつもお世話になってるクーちゃんにも、バレンタインのチョコv」
「…。」
「甘い物苦手でも、とりあえず受け取っといてよ。一生懸命作ったんだから。」
「…貰っておいてやる。」
「良かったぁ。…でもね。やっぱ気が向いたら食べてよ。お義父様も皆も、美味しいって言ってくれた自信作なんだから!」
「…………皆?」
「7世界の英雄の皆さんと、ヒーローくんとタツくん。それと、ミィちゃんとぷるるちゃんとも交換したv」

ミィちゃんがくれたのって、美味しかったけど…きっとアマゾネスさんが作ったやつなんだろうな…。
あ〜…それにしても、バードさんにあげるんじゃなかった。
あげた瞬間何を勘違いしたのか、しつこく付きまとってくるし。
あれじゃあ…少なくとも、あと10年は一人身だな。うん。

「あいつらにやる必要ないだろう!」
「なに言ってるの。クーちゃんの大切なお友達なんだから。」
「友達じゃないっ!!」
「も〜。素直じゃないんだから〜。」
「違う!…とにかく、お前はあいつらと馴れ合うな!馬鹿がうつるぞ!!」

あらら。素直じゃないこと。
仲がいいと、余計に嫌いなフリしちゃうタイプなんだね。
だから、あの人のことも……………あっ!?

「そうだ!クーちゃんに聞かなくちゃいけない事があったの!!」
「なんだ。」

いきなり大声出したから、ちょっと驚いたご様子。
でも、今はそんな事どーでもいい。

「あのね…その、………………………………好きかな?」
「なに?」
「だから!………し……忍さんって、甘い物…………好きかな?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ