自由人夢

□逃がすもんか
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拝啓 お父さん、お母さん、リュウ、白龍さん……そして、タッちゃん。
私は今、とってもピンチと言うか最悪と言うか…現実逃避したい状況です。
そりゃあもう…嫌で嫌で嫌過ぎて。こんなに生きて行く事を苦に感じたのは昔“家族対抗鞭打ち合戦”に付き合わされて以来です。
本当に誰でもいいから助けてください。
紅龍でも氷龍でもなんでも呼んでいいから、この私を助けて下さい。

「…すまぬ…。突然知らない人が家に入ってきたから、忍…思わず手首切っちゃった…。」
「は…ははは。そりゃあ、すみませんでしたね…。」

不気味な笑みを浮かべて、なんともさらりと問題発言をしてくれた。
そんな事言われたら、こっちはなんと返したらいいの?
苦笑いしか出来ないわよ。あははは。

「はい。止血できましたよ。」
「ありがとう。見ず知らずの初対面の人に、こんなに優しくしてもらえて…忍、嬉しくてまた切りそうだよ…。」
「それじゃ止血した意味がないんで、やめて下さい。てゆーか絶対やめろ!」

思わず口調も強く、そして悪くなった。
しかしこいつ…多分、忍って言うのかな?忍は大人しく剃刀をしまってくれた。
私の周りには、自慢じゃないがマトモな奴がいない。
大酒飲みの英雄、正義の心で冷酷な男、金銭欲にまみれたちみっこの幼馴染の3馬鹿兄弟から始まって、それらの友人の変人達。
そんなのに囲まれてるけど…今となっては、あの人達すら可愛く見える。

「…手当、上手だね…。」
「あ、ありがとう。知人で怪我する奴がたくさんするから慣れちゃったのかな…。」
「…………………………………………………………………忍のお仲間?」
「絶対違う!断じて違う!そんな嫌な知人はいないっ!!」

ブシャ…!!

「なぜ切る〜〜〜〜〜ッッッ!?!?!?」
「だって…忍の事も、嫌だって…思ってるんでしょ…?」
「お、思ってない!思ってないから、お願いだから切るなぁッ!!!」

ダァラダラと血が流れてる!!!
あ〜、もう…。こんな事なら、白龍さんの正義の心なんて見習ってこいつの手当なんかするんじゃなかった。
リュウやタッちゃんならやるであろう、“見て見ぬフリ”をして速やかにこの場を立ち去れば良かった…。
逆恨みだって分かってるけど…白龍さんに怨念を送ってやる…。

「…今、いい感じの電波…送ったね?」
「なに。(やっぱり)わかるの?」
「うん…。忍、そういうのに敏感だから…フフフ…。あ、止血…ありがとう。」
「いえ〜。全然構わないけど、もう二度とやりたくないから切らないでよv」
「…………………………………………………………………………………うん。」

すっごい間があったし。しかも、目線合わさないし!!
人がせっかく無理矢理笑顔まで作って言ってやったのに…!
…忍…………。肌も白くて綺麗だし、体も華奢なようでしっかりしてるし…顔もいいのになぁ。
外見は…うん。タイプかも。つーか、タイプです。
あ〜ぁ。勿体ない、勿体ない。
でも、人間性がかなり問われる人物とはお近づきになりたくない!

「………。」
「な…なに?」
「そういえば、名前…お互い自己紹介してなかったなって…。」

そりゃあ出会い頭に手首切られり、止血したり、また切られたり…自己紹介なんて入る余地なかったからね。
そう愚痴りたい気持ちをぐ、と堪えた。
だって…言ってしまったらどうなるのか、この短い時間で学習したから。

「…せ、せせせ拙者はし、しの、し…忍とも、も申します。四露死苦…v」

気味の悪いどもり方したうえ、さらに気味の悪い自己紹介!!
正直さっきから一人称が名前だったから分かってたし、不気味なのもわかってたから自己紹介されても何も得るものがなかった。

「キミは…竜人でしょ…?」
「…………な、なんで知ってるの!?エスパー!?」
「フフフ…。キミが来る直前に、お友達が“竜が飛んでくる”って、教えてくれたんだ。…ね?」

だったら驚いて手首切るなよ!!
そして、お友達って誰だよ!後ろに向かって微笑むな!私には見えん!!

「それで…キミの名前は…?」
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