自由人夢

□ルーンメイス
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「忍〜!明日、七世界の夏祭りがあるんだけど、一緒に行かない?てか、一緒に行こう!?」
「夏祭り…?…フフ…忍、夏祭りなんて人がいっぱいいる所に行くの、本当に久しぶりだから…手首切りそうだよ…。」
「行く前から剃刀を構えるな!」
「…でも、汚物子が折角誘ってくれたんだから…忍、行くよ。」
「本当!?やったぁ〜v明日楽しみにしてるからね。」
「忍も楽しみにしてるよ…。」





…………………………楽しみにしてたのに。
私は只今、浴衣姿でこの雑踏の中…一人でいる。
数分前までは横を歩いていた忍は、今は一体どこにいるのやら…。
自業自得だって分かってるけど…分かっちゃいるけどさぁ!!
…私は久しぶりの夏祭りで、つい…はしゃぎすぎてしまった。
そのせいでいつの間にか一人でズンズク歩いて…気づいたら愛しの忍の姿は消えていた…。

「うぅ〜…。あの長身だから、目立つと思うんだけどなぁ〜。」

…と、思って探してみてもみつからない。
闇雲に歩いても逆に悪いんじゃないかと思って、今は端に一人突っ立って忍を探してる。
あぁ…こういう時、ケータイ持っててくれると便利なのに…。
だけど前に一度、忍にケータイを持たせたら…着メロに驚いて着信の度に切ったんだもん…。
ハァ…。なんか…すっごく寂しい。
忍ぅ〜…どこ行っちゃったのよぉ〜…!!

「ねぇねぇ、そこのキミ♪」

このまま会えなかったらどうしよぅ。
さすがに、一人で帰っちゃうって事はないよね!?

「ねぇってばぁ、無視しないでよ。」

…あン?さっきからなんかうるさいと思ったら、私に話しかけてんの?
顔を上げてみたら…いかにもチャラチャラした感じの男が一人。
ニコニコ…むしろ、ニヤニヤしながら私の前に立っていた。

「…なんですか。」
「浴衣可愛いね〜。あ、勿論キミも可愛いけどv」
「…ソレハドウモアリガトウゴザイマス。」

なんだなんだなんだ。
怪しいキャッチセールスか何かか?
…いや、こんな馬鹿っぽい奴がセールスマンじゃないか。
ならナンパってやつかい、もしや。

「…私になんの用ですか。」
「え?いや、こんな可愛い子が一人で俯いちゃってて、どうしたのかなぁって思ってさ。」
「あなたに心配されるような事ではないので。」
「うわ、きっついなぁ。…でも、そこも可愛い〜。」

なんでも可愛いですむと思ってんのか、こいつは。
言葉のレパートリー少ないんだなぁ…。
こういうところで、自分の馬鹿さを強調してるって気づいてないんだろうな。

「一人ならさぁ、俺と一緒に回らない?」
「一人なのにわざわざ浴衣着て祭りに来るような虚しい事をするような人間ではないです。」
「じゃあ迷子になっちゃったんだ。」

迷子って言うな!!
…クソッ…確かに、反論はできないけど。

「え〜?一緒に来た子って女の子?」
「男です。」
「ダチ?」
「カレシです。」

…………………………冷静を装ってるけど、やはり“カレシ”とか言葉にするの恥ずかしい。
…というか、今ふと思ったけど…“カレシ”って言葉が似合わないなぁ忍。

「げぇ。やっぱ可愛い子にはもういるんだ〜。…じゃあさ、一緒にカレシ探してあげるよ。」

探す気ねぇだろ、絶対。
ここで付いて行ったら、飴玉貰って誘拐されるのと同じね。

「全然全く欠片も必要ありません。
「そんな遠慮しないで…ほら。」

遠慮じゃないから、普通にね!!
だけどこの勘違い野朗は私の胸の内など分かるほどの頭は持ってないようで、その手を私に近づけて私の手をとろうとしてきた。
避ける為に一歩後ずさろうとしたら………あれ?
背中に何かが当たって下がれない。
壁からは少し距離があったから、あと一歩ぐらいは下がれたと思ったのに?
不思議に思ってる間にも、男の手は私に伸びてきて…………止まった。

「な…なんだこれ!?」
「え!?」
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