自由人夢

□原型『鶴の恩返し』 (不死眼)
1ページ/7ページ

「あ…。」
「カァー…カァー…。」

か細い鳴き声。
漆黒の身体。
傷だらけの翼。
大きな傷と不思議な光りを放つ右目…。
そこには世にも不気味な一羽の鴉が罠にかかっていた。


=不死眼=


街から家への帰り道。
全く売れなかった織物を持ってトボトボと歩く汚物子の耳に、どこからか弱々しい鴉の声が聞こえた。
ふと道の横の草むらを見ると、そこにその鴉が罠にいたのだ。

「罠にかかったこいつも可哀想だけど、罠をかけた方もよりによって鴉がかかるなんて…運がないわねぇ…。ザマーミロ。」

自分の織物が全く売れないせいか、だいぶ捻くれているようだ。
そして更には鴉を木の棒で突きだした。
相当日々のストレスが溜まっているのだろうか。
鴉は大きく抵抗する事もなく為されるがままだ。

「…変な右目。子供に石でも当てられて怪我したの?…ったく、今は罠にはまって…。本当についてない奴。」

今度は人差し指で頭を撫でてやった。
その間、鴉はジッと汚物子を見つめるばかり。
暫くそうしていると…汚物子は溜息をついてから、鴉の罠を解いてやった。

「アンタみたいに不幸な奴の不幸な姿見ても面白くもなんともないから、とっとと家族の所に帰りなよ。じゃあね。」

本当にもう心底鴉への興味がなくなったのか、そう言うとさっさと歩き出した。
鴉が飛び立つこともなく、去っていく汚物子の後姿を見つめている事も気付かずに。

***

「あ〜…ぁ。今日も売れなかったなぁ…。」

それから数日後の汚物子の家。
相変わらず彼女の織物の売れ行きは絶好調に悪いらしい。
目の前のたくあんとご飯と言う、実に貧しさが現れた食事に先程から溜息が止まらない。
しかし食わずには生きていけない。
しっかりと少ない食事を味わって食べていた。
すると、戸を叩く音が。

「ごめんください…。」
「んーどちら様ですか?勧誘・強盗なら一切お断りですよー……ウチにはなんもないですからね、何にも………………ぁ。」

言っていて悲しくなるような断りの言葉を発してから、台所から包丁を持って来てから戸を開けた。
(注*例え女の一人暮らしとは言え、危ないので皆さんはやめましょう)
すると…そこには黒い着物を纏った右目を前髪で隠した美しい青年が立っていた。
思わずその男の綺麗さに面食らってしいまい、そのまま立ちすくんでしまった。
…………………が。

バシュ…ッ!!

「へ……………………って………………きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「フフフ…いきなり包丁持って出てきたから…忍、ビックリして手首切っちゃった…。」
「あ。それはごめんなさい…。いやいやいやいやいやいや!!私が悪いのか…?私が悪い?いや、だって普通切る!?切っちゃいます!?そんな血がドクドク流れるほど…って、早く手当てしなくちゃだ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ