その他あーみん夢

□きみにこんちには
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「だーっれだ♪」
「わっ!?ら、ライブ!?人が散々心配してたのにふざけ…え?」

目を覆う手を掴み、振り返ると太陽を背にした彼がいた。
今日は少し暑いくらいお日様が照っていて、真っ青な空が広がり白い雲は少ししか見当たらない。
まるでそんな天気のようないつもの明るくて元気な歌うような声。
目隠しをされてもそれが誰かを間違えるはずがない。
万が一間違えたとして、この正解だけは有り得なかった。

「残念、僕でした。」

太陽の光を浴びるデッドはまるで蜃気楼みたい。



=きみにこんにちは=



「大丈夫ですか?」

最初はニヤリと笑っていたデッドも私があまりに呆けているものだから、今は気まずそうな表情に変わってしまっていた。
大丈夫だと何度言おうと思っても上手く声が出せない。
さっきから色々言おうとはしているんだけど、頭に浮かぶ言葉がせめぎあってこうして目をパチクリ、口をパクパクするばかりで直立不動になってしまっていた。

カーンッ

「いたたたた!!!」
「動けるようになったようで良かったです。」
「人を呪っておいて何が良いと!?混乱した相手への対応は他になかったの!?」
「これでも駄目だったら、あなたの額で呪術を実行するところでした。」
「それもう呪術じゃなくてただの物理攻撃だよ!」

激痛に襲われた心臓を押さえていた手は瞬時に額へ。
デッドはそんな私の必死の訴えも喉で笑いながら、藁人形と五寸釘と金槌を懐へしまい始める。
とりあえず危機は去ったようなので額から手を離してジロリとデッドを睨んだ。

「…今ので絶対間違いなくデッド本人だってわかったけど、でも…どうして…?昨日の天変地異や針の塔がなくなったのが関係あるの?」
「ええ。話せば長くなりますが……色々あって、結果的に呪いは解けました。」
「物凄いはしょったわね…。でも…良かった…デッドがいてくれて。」
「え?」
「呪いが解けたら、デッドはいなくなっちゃうかもって…心配してたから。これからもデッドとライブ、両方とずっといられるんでしょ?本当に良かった!」
「嬉しいなー!汚物子、本当に大好きだよー♪」
「ちょ、ちょっとデッ、ラ、ライブ!」

デッドが驚いたような表情をしたかと思えば、次の瞬間にはライブが私に抱き着いていて驚いて声が裏返ってしまった。
こんなにパッパッと切り替わられるとちょっと戸惑ってしまう…。

「汚物子が嬉しい事言ってくれて、デッドの姿じゃ上手く表現できないからさ♪」
「そんな事言ってたら、これからは喜ぶデッドや沈んでるライブ見れなくなっちゃいそうで嫌。」
「はは♪それもそうだ♪」

ニコッ、と向けられた笑顔は本当に太陽みたいに眩しい。
きっとライブ自身もデッドでいられなくなる不安があったのだろう。
呪われた姿とは言え、デッドもライブ。自分自身だもの。

「ねぇねぇ汚物子♪」
「なあに?」

体を離して私の右手を左手で握り、ぶんぶんと前後にふりまわす。
ちょっと腕が疲れるけど、まるで犬の尻尾の感情表現のようで面白い。

「夜になったらさ、僕にこんばんはって挨拶してよ♪それで街の街灯や星を見に行こう!」
「もちろん!楽しみだね。」
「だから今は、デッドとたくさん昼を楽しんで♪」
「ふふ。どうせまたちょくちょく出てくるんでしょ?」
「もっちろーん♪だって僕もデッドで」
「僕もライブですから。」

いよいよ頭の高さに届く勢いで振り上げられた手がストンと急落下。
ぎゅーっと遠慮無し強く握られた手の力も、少し緩やかに優しいものとなる。
手袋越しであるのに、なんとなくひんやりと気持ちいい気がしてくる。
横を向き笑いかけると、少し照れたように笑い返してくれた。

「こんにちは、デッド。」
「こんにちは、汚物子。」
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