その他あーみん夢

□押入れMY PRINCE
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ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

バタンッ! ガッスンッ!!

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……!!!!

バッターン!!!!

「凶門さぁんvv」

けたたましいチャイムから、わずか10秒弱。
人間とは思えぬ速さで部屋に入り、奴は俺の名を呼ん…いや、叫んだ。
その声からして息切れなどはまったくしてないようだった。







「あれ〜?凶門さんがいない?」

…危なかった。
あともう少し、押入れの戸を閉めるのが遅かったら確実に見つかっていた…。
しかしまだ危機が去った訳ではない。
そう思い、気配を消し、物音を立てないようにしながら耳に神経を集中させる。

「よぉ、汚物子ちゃん。」
「火生さん…と、端っこにいるのは帝月くん。こんにちわぁ。…あれれ?凶門さんもいなければ、天馬も飛天さんと静流もいない?」
「え?天馬?あいつだったら、さっき…。」
「汚物子〜〜!!!」
「あ、天馬発見。」
「“天馬発見”じゃねーよ!汚物子が思いっきりドア開けやがったから、それが顔面にぶつかって、更に壁とドアに挟まれてつぶされたんだぞ!?」

…やはり、ドアが開いた音のすぐ後の鈍い音は天馬だったか。
この様子だと相当痛かったらしいな。

「メンゴ、メンゴ。てゆーか、男が細かい事気にすんな?」
「全然細かくねーよ!見ろよ!このデッケータンコブ!!」
「わぁ…本当、お見事お見ご………あ〜〜!!!」
「な、なんだよ急に…。」
「天馬!たしか来週、練習試合あったよね!?大丈夫!?ちゃんと試合に出れる!?」
「え…いや、そこまでひどかないけど…。」
「なんだ。心配して損した。試合に出られないと凶門さんにも迷惑かけちゃうけど、出られるんでしょ?それなら、無問題♪天馬って結構オーバーだよねぇ。」

たしかにそれは一理あるな。
天馬が試合に出ないとなると、うちのチームにはかなりの痛手になる。
だが、試合に支障がない分ならどんな怪我をしようと別に構わない。
…また天馬が怒っているな。まぁ、無理もないか。

「まったく…騒がしいのが減ったと思ったら…。」
「帝月くんひど〜い。勝手に怒ってうるさくしてんのは、天馬だけだよ〜。」
「うるさくさせてんのは誰だよ!?」
「…さぁ?私じゃないのは確かね。6年間幼馴染してるけど、天馬を怒らせた事なんて一度も…。」
「嘘つけ年増!それともボケたか?」
「え〜?なんだってぇ〜、天馬くぅん?三つだけ大人な汚物子お姉様に対して、今、なんて言ったぁ?」

聞こえてくるのは可愛らしく作った猫なで声だが、なぜか黒い物がありありと伝わってくる。
それにしても…学習能力がないのか、天馬。
以前にも似たような事があって、神経的を2〜3日立ち直れないぐらい言葉攻めにあったと言うのに…。

「でさ、私、天馬とこんな事しに来たんじゃないのよ。」
「…また凶門か?」
「恐ろしいものだな、ストーカー女は。」
「ホンット、懲りないよなぁ汚物子ちゃん。」
「ちょっとちょっと!何よ皆してその言い方!!私はただ、凶門さんに恋しちゃってるだけじゃない。…そう。あれは2週間前の事…。私が可愛い幼馴染が野球してるのを見に行ってあげようと、グラウンドに行った時……運命の人に会ったのよ!!それがまさしく…凶門さんvもう一目見た瞬間から私に電撃が……。」
「あ〜ぁ。始まっちゃったよ。汚物子ちゃんのアレ。」
「オレ、これで11回目…。」
「…ふぅ…。」

思わず帝月と同じく、深いため息が出そうになるがなんとか堪える。
でないと、また面倒な事になる。
汚物子はさっき自分でも言っていた通り、俺に好意を寄せているらしい。
そしてそれから、毎日のようにグラウンドや家に押しかけ、会うたびに……飛びつかれる。
どんなに邪魔だと言ってもついてきて、更には妖怪だと明かした…が、アッサリと“知っていた”と答えた。
なんでも昔から霊能力があったとかで、俺達の事もすぐに分かったらしい。
だから今も、普通の者には見えぬククリの呪者である帝月の姿も見え、普通に話しているのだ。
……本当に、変な女だ。
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