封神夢

□悪趣味は誰だ
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世の中権力!地位も名誉も強さも金も、権力者が握ってるもの。
権力を手に入れる事こそ最大の幸せ。そんなもんでしょ?
…でも、私には権力者になれるほどの力はない。無理ってモン。
でもだからって私は諦めない。だって…幸せになりたいもん!
幸せになるなるためなら、手段は選ばない!


「…と、言う訳で頼んだぞ。」
「はい。お任せを。元始天尊様。」

一人の少女…いや、見かけは少女の道士が、崑崙山の教主元始天尊に一礼して謁見の間を後にした。
…その直後、彼女が微かに口の端を上げたのには誰も気付かなかった。
彼女の名は汚物子。崑崙山の道士で元始天尊の弟子。太公望や12仙の一人である普賢真人の2人とは特に仲が良かった。
他の仙道とも仲が良い…というより、人気があった。
その理由は人当たりの良さ、妲己に負けず劣らずの容姿。実力もなかなかで、頭も良い。まさに才色兼備。
そんな彼女の魅力に魅せられた仙道は星の数?
…が、彼女をよく知る太公望と普賢は知っている。彼女の本性を。

「ふ…ふふふ…。やっと来たわ…待ちに待ったこの日が!」

自分の飛行&攻撃宝貝で崑崙山からだいぶ離れてから汚物子はそう呟く。
この汚物子は一言で言うならば“隠れ妲己”。
…そう。彼女の野望は“最高の玉の輿GET”なのだ。
彼女の考えは『自分が権力者になれないなら権力者をオトせばいい』。
だから彼女は誰とでも(特に元始天尊や12仙など)にこやかに接する。

「ふふ。待っててくださいね。私の幸せ…もとい、楊ゼン様!」

彼女は前々から封神計画に参加したがっていた。その理由は、今口からも出た名前の本人、12仙の玉鼎真人様の弟子で天才美形道士として有名な楊ゼンに会うため。
前々から目をつけていたが、封神計画での活躍で確定。
他にも活躍者はいる。しかし彼女いわく。

「道徳様のところの天化様はカッコ良いし強いけど、人の上に立つってタイプじゃないし(なんせ師匠はスポーツ馬鹿)。ナタク様は…宝貝人間って恋愛感情とかあんの?」

そうなると顔良し性格も…ナルシストだが、それを除けば…OK。そして天才道士と呼ばれるほどの実力。更に実は妖怪仙人で崑崙と対立の金鰲島の教主の息子!(汚物子の情報収集力は天才的)
まさに汚物子の標的にされるべき人物。

「あ〜…早くお会いしたいわ〜!」
「ほう。誰に…ですか?」
「!?(なんで猫が空飛んでんのっ!?)」
「おや。どうしたんですか、汚物子。」
「えっ、いえ、なんでも…。…え?なんで私の名前を…?あなたは一体…?」

野望を達成した自分を夢見ていると、ふいに聞きなれぬ声が耳に入ってきた。
いきなり、その初対面の相手に名前を呼ばれ驚く。
そしてその時初めて猫(?)に乗っている声の主を見たのだった。

「フフフ。私は何でも知っている、とでも言っておきましょうか。…あと、私の事でしたか。私の名は」
「し…申公豹様!?」

もはやその声は悲鳴と呼ぶべきものだった。
彼女の恐ろしいまでの情報で仙人界の関係者の顔と名前は完全に一致している。
その中でもかなり印象深く残っている人物の一人。最強の霊獣黒点虎に乗った仙人界でその名を知らない者はいないだろう、最強の道士申公豹。
いきなり現れた超大物。声を上げてしまうのも無理はない。
いきなり叫ばれた申公豹は少々驚いているが。

「なんですか、いきなり大声を出して…。」
「あ、も、申し訳ありません!!まさか、その…最強の道士であられる申公豹様が、私なんかの前に現れるなんて…ゆ、夢にも思ってませんでしたので…。」
「そうですか。安心して下さい。あなたに危害を加える気など毛頭ありませんから。」
「は…はあ…。」

やはりまだ動揺が残り、返事はしどろもどろなものになってしまい、目線も少し下の方に。
…まぁ、目線が下のほうになったのは違う理由もあったからだ。
それは彼女の印象に残ったのと同じ理由。

「(ぷっ…。や、やっぱりあの服装…笑える!)」

そう。申公豹の服装。太公望も初対面にもかかわらずで思わず言ってしまった『悪趣味』という言葉。

「(仕方ないよ。だって、あの格好だもん…。本人はあれがいいと思ってるからタチ悪い…。あの人の師匠の三大仙人の太上老君様も相当ヤバイのかな…。)」

そんな事を考えて少し顔がにやけそうのを必死で押さえた。
さすがの汚物子も太上老君の姿までは見た事がないらしい。
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