封神夢

□ご近所事情
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今日は12月24日…クリスマスイヴ。
それは恋人達のための日と言っても過言ではない。
そしてここにも例外でない、愛し合う二人が…。

「寄るな触るな向こう逝け!!」
「ほら、さっきから寒いと言ってたでしょう。もっと私に近づきなさい。」
「アンタのその発言が、更に私の身も心も寒くして凍死寸前まで追いやってるのに気付いてよ!?」

…い、る。



ご近所事情



街中は綺麗に彩られ、雪が降っているのにも関わらず温かな雰囲気が出来上がっている。
それは店などの飾りの明かりや、ツリーの光りのせいだけではない。
歩く人々のおかげでもある。
…しかし、その雰囲気とは明らかに異種の雰囲気を出す二人。

「もーヤダ…寒い。本気で寒い。家に帰るぅー。」

帽子にマフラー、手袋…。
実は靴下も二枚重ねて履いている。
それなのに小刻みに震えながらグチグチとボヤくのは汚物子。
この辺りに一人暮らしをしている。

「ダメです。ほら、もっと寄って下さい。」
「セクハラだ!」
「そういうことを言うのなら、本当にセクハラしますよ?」
「お巡りさん!この人一生陽の当たる所に出れないようにして下さいッ!!」

…そして、その汚物子に完全拒否されているのは申公豹。
汚物子の住むマンションの管理人なのだ。
いつも気紛れに町を出歩き、面白い事を探してペットの黒点虎(ブチ猫)と彷徨っている近所でも有名な変人だ。
しかし何か裏にあるのか…総理面会すら顔パスと言う噂の流れる謎の人。
幸か不幸か…申公豹に気に入られ、彼女はなんとただで今のマンションに住んでいる。
しかしその代償のように、異常なまでに付き纏って来る申公豹。
ハッキリ言ってこれはストーカーの域直球ど真ん中ストライクゾーン。

「フフ。無駄ですよ。町のお巡りさん程度が私を捕まえるなど。」
「ぎゃー!なにこの人怖い事さり気に言ってるの!?」
「人にぶつかりますよ。」
「あうっと!」

そう言って、ヒいていた汚物子をグイっと自分の方へと引き寄せた。
自然と二人の距離はなくなり密着する。
その瞬間、汚物子の顔は真っ赤になった。
それは悪魔の悪戯か、神の嫌がらせか、もしくは申公豹の策略か…汚物子も実のところは申公豹に想いを寄せている。
ただ素直になれないだけである。
だから申公豹からのアプローチも、殴る蹴る踏む潰す捻る捨てるなどで対応。
…いくら素直になれないからといってやり過ぎのように思えるが、申公豹にはほとんど効いてないので良い。

「こうしていた方が暖かいでしょう?」
「…あ、あったかさに免じて許す。」
「それはどうもありがとうございます。」

ただでさえ密着しているのに、顔を覗き込まれて更に汚物子の顔は赤くなった。
結局どんなに抵抗しようが、最終的には申公豹の思うツボなのだ。

「そ、それより!クロちゃんの餌買うんでしょ?だったらさっさといつものペットショップ行こうよ。方向違うじゃん!」
「……は?」
「は?…じゃないよ。アンタが言ったんでしょ、クロちゃんの餌が切れたから買いに行くって。んで、いきなり買い物に付き合えって言って、私の所に押し掛けてきたんじゃないよ!」
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