封神夢

□お義父さんと御対面
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「ここは何処だ。ぁん?」
「おや。スゴみ全開ですね。しかし、そんな怒った顔も私は好きですよ。」
「黙れこの変態ストーカー道化師!てゆーかね。この状態はもうストーカーすら乗り越えて、ゆ・う・か・い・は・ん・よ!!」

そう怒鳴った汚物子の声は羊の鳴き声の中に消えていった。


=お義父さんと御対面=


事は既に汚物子が目覚める前から起こっていた。
顔に当たる風。
温かいものに包まれる体。
そして不思議な浮遊感。
明らかにいつもの朝とは違うこの感覚にボンヤリと疑問を持ちつつ、目覚めた汚物子が見たのは……ドアップの申公豹の顔。
なんと黒点虎に乗った申公豹の腕の中にいたのだ。
この時の汚物子の悲鳴は殷にも周にも仙人界にも響き渡ったそうな。
勿論暴れだして逃げ出そうとしたが、下にいて汚物子が暴れるたびに痛い思いをしている黒点虎の悲痛な声に大人しくするしかなかった。
そして渋々申公豹に連れられて数分後…見た事のない場所へと降り立ったのだ。

「羊がこんなにいるって事は…姜族の村?」
「ええ。」
「んでなに。今日は羊毛刈り大会でもあるってか。アンタ参加すんの?やめておきなよ。羊が怖がって逃げてくから。羊可哀想だし見てるこっちも可哀想だよ。」
「何を勝手に話を作っているんですか。そうではありません。」
「じゃーなんなの。姜族って言ったら羊しかない金も何もない民族でしょ。」
「かなり失礼な物言いですね…。まぁ、別に良いですが。」
「いいのか。」
「私たちが会いに来たのは此処にいるある人物です。他は関係ありません。」
「ある人物?」

無駄話の末にやっと話が核心に戻った。
今日ここに汚物子が(強制的に)連れて来られて理由……それは、この村にいるある人物に会わせる為。

「それで?そのある人物とやらは、誰なの?」
「もうそろそろ見えてくるはずですよ。…ほら、あそこに。」
「ん?」

ピッ、と申公豹が指差した方向に素直に目を向ける。
そこには何故か大量の羊が体を寄せ合っていた。
それに疑問を持ちつつも、他に変わった様子もないし人影もない。

「……………………羊にならもう充分会ったけど。」
「違いますよ。その上です。」

そう言われてみれば、確かに羊たちの上に何かいるようだ。
遠くてよく見えないので近づいてみる。
そして…だいぶ距離が近くなり、汚物子はハッキリとその存在を目にした。
それは…よくわからない。

「何コレ。」
「老子です。」
「老子?老いてるの子供なのどっちなのよ。てゆーか、本当に何!?これは服!?服なの!?」
「怠惰スーツです。彼はあの太公望以上の怠け者でしてね。この完全完璧な安眠を提供する怠惰スーツを着用し、3年に一度しか目を覚ましません。」
「そんな奴は埋めてしまえ!…まさか、こんなのに会わされる為にわざわざ誘拐されたの私。」
「ええ。」

即答した申公豹。
それにピシリ…っと、一瞬固まる。
しかしすぐに体をフルフルと震わせ、宝貝を振りかざした。
勿論、その攻撃は一直線に申公豹へと飛ぶ。

「ふざけるなーっ!!なんで私がこんな夢も希望も金も権力も幸せも、一欠けらも持ち合わせてないような怠けの塊に会わなきゃなんないのよ!?」
「確かに彼は無の境地ですが…。しかし、私たちには一応重要な人物なんです。」
「一応って…。」
「ええ、一応私の師匠ですからね。」

汚物子の攻撃を避けつつ言うと…再び、汚物子の動きが止まった。
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