その他夢

□一番
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「そんな…顔が赤くなるまで怒る事ないでしょ。」

飽きれたような口調で汚物子は言った。
こいつ…普段は妙にカンがいいくせに、こういう時ばかり…ッ!!
怒りと脱力感に同時に襲われて、無意味に疲れてきた…。

「そんなにアスランの事嫌い〜?」
「ああ、大嫌いだ!!」
「…で。そのアスランに勝って一番になりたいんだ?」
「そうだ!!」
「ふぅん。」

こっちは強い口調で言っているのにも関わらず、やはりこいつはマイペースに答えてくる。
この妙にしっくりこない会話のあと、汚物子は何かを考えるように視線を宙に泳がせた。
…なんなんだ、本当に…。
しばらくその様子を眺めていると、ふいに目が合った。
突然の事で一瞬、心臓が跳ね上がったような気がしたが、それを隠して冷静を装うとしている俺にも気付かず、汚物子は口を開いた。

「イザークは、とにかくアスランに勝てれば嬉しいんだね。」
「ああ。」
「…負けの数なら…。」
「おちょくってんのか、貴様ぁっ!?!?」
「ごめんごめん、冗談よ。…ん〜、じゃあ。イザークがアスランより上で、ダントツ一番の物があるって…知ってる?」
「なにぃ!?」

俺は今まで様々な分野で、アスランに勝負を挑んできた。
だが…奴はいつもいつもいつもいつもいつもいつも……すました顔で勝ちやがる!!
射撃だって俺が首位だが、それは奴が体調不良だったせいで勝ったとは思わない!
それにダントツと言う訳でもなかった。
アスランを完膚なきまでに負かすことが出来るなら、今すぐにだって勝負しに行ってやる!!!

「早く教えろッ!!」
「あ〜う〜…でも、やっぱ勝ってもそんな喜ぶような事でもないかもしれないかもかもかもかもかもかもかもかも…。」
「えぇい!!かもかもうるさいぞ!!」
「あ〜…う〜ん。」

詰め寄って問いただすと、今度は言いにくそうに口篭もり始めた。
汚物子が口篭もるなんて滅多にないことで、内心驚いた。
しばらく汚物子の珍しいその様子を楽しみながら、問い詰めて行くと…。

「…わかった。言うよ。…ただし!笑うな怒るな呆れるな!!」
「ああ、わかった。」

俺がそう返事をしても、まだ半信半疑でこっちを見つめてきた。
だが、少したつとおもむろに肩から下げたカバンを探り始めた。
……なんで俺とアスランの勝負の事で、カバンを探る?
と、言うか。そういえばなんでこいつが言い渋る必要がある?
冷静になってみると出てきた疑問。
それを考えていると…ふいに、視界に何か入ってきた。

「なっ!?」
「なに驚いてんのよ。…ほら。」
「あ…?」

思わず驚きの声をあげると、なぜか少し怒ったような汚物子の声がした。
強引に押し付けられた物をみると…ラッピングされた包み。
…………もしかして。

「汚物子!…な!?おい、汚物子!?」
「なによ。」

胸の内にわいた期待が正しいか確かめたくて、顔を上げるが…。
汚物子はさっきいた場所から少し離れた場所を歩いていた。
慌てて呼ぶと、返事をして立ち止まったが振りかえらなかった。

「……汚物子、これは…。」
「バレンタインチョコ。」

そっけない言葉に、いつもなら怒声をあげるところだが。
不覚にも嬉しさが勝っていて、口元が緩むのを押さえるのに必死だった。
……………………………ん?
チョコの入った包みを眺めている内に、ふと思った。
嬉しいんだが…今までの会話とチョコ…関係あるのか?

「チョコね…アスランとディアッカとニコルとラスティーにもあげたの。」

俺が頭を悩ませていると、突然汚物子が言い出した。

「…知ってる。ディアッカとラスティーがイヤと言うほど見せ付けてきたからな。」
「…じゃあ、チョコも見た?」
「ああ。」

なんせ、ラスティーが思いっきり俺の目の前でわざとらしく食いやがったからな。
クソッ…思い出すだけで腹が立つ!!
やはりあのとき、本気で殺しておくんだったな。

「皆にあげたチョコ、形も大きさも同じなんだけど……………………………イザークのだけ、違うの。」
「………………………それは…どういう。」
「アスランのよりも、誰のよりも、イザークにあげたチョコの方が大きいの!」

そう叫ぶやいなや、汚物子は走って行った。
……それは、つまり…………………。
その意味を理解かると、顔だけでなく体中が熱くなった。
…チョコは嫌いだが…これは食べようと、そう思った。
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