小説
□こうして彼女は旅に出た。
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「あたしねー、いつか旅に出るんだー」
そう言って彼女は両手を広げた。
まるで、舞い落ちてくる何かを受けとめようとするかのように。
僕は彼女に聞いてみた。
「僕を置いて?」
彼女は困ったような顔をした。
「…君を連れては行けないよー」
「何故?」
「きっとあたしは、君を駄目にしてしまうから」
僕は、少し話題を変えてみた。
「何故、旅に出たいの?」
彼女は少し考えて、こう答えた。
「空から落ちてくる"何か"を受けとめたくて」
「…"何か"って?」
「"何か"、だよ」
答えになってないよー、と言って僕は苦笑いをした。
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