□分岐
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出張を終えて帰って来た近藤は、屯所の空気に違和感を覚えた。

もともと人間関係のいざこざなんてものにはからきしうとい近藤ではあったが、そんな近藤にも解かるほどに、原因ははっきりしていた。
明らかに、土方はおかしかった。
やたらぴりぴりしている。しかしいつものような覇気はないのだ。
彼の虫の居所で屯所の雰囲気が変わるという事はままある。なにしろ鬼であるから。

だが今の彼は鬼というより手負い虎という印象が強い。
しかも神経過敏で、ヒステリックな奴だ。

どちらも強暴であるが、追い詰められているから噛み付く、そういう感じだった。
妙に回りを警戒して、後ろから声をかけただけで緊張感を張り詰める。

そして極めつけておかしいのが、俺を避けるという事だ。
近藤がもっとも訝しく思うのがそれであり、なにかが変だと鈍感な近藤がいち早く気がついたのもそれがあったからだ。

異変に気がついてまわりをよくみれば、沖田も、土方ほどではないが何か変で、普段から愛想のいい方ではないが、態度が冷たい気がするのだ.

二人が揃えばなおの事、お互いに必要最低限しか話をしない。
一見、どちらとも平静に見えるが、なんだろうか、この違和感は…。

ほかの隊士達も気にかかっている様ではあった。

このままでは、士気にかかわることだと判断して、土方に問いただそうと声をかければ、今、チョット…などとお茶を濁して、逃げる始末。
やはり避けられている。

こんなのは気持ちが悪い…、すっきりしなくていやだ。
ちゃんと原因をきいて、解決してやろう、そう思って、見まわりから帰ってきたのを見計らってトシをつかまえた。
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