□煙草(沖田編)
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屯所の陽当たりのいい縁側、俺は見回りに出るのに総悟を探していた。
大体の場合あの人を小馬鹿にしたアイマスクをつけて縁側で寝こけてやがるから、総悟を探すって時点で俺は縁側に向かった。
珍しくそこに奴は居なくて、結局屯所の奴の居そうなところを回り、
…でまたここに戻ってきちまった。

「ったく…総悟のヤロー…」
屯所をぐるりとして、しかも声を張り上げりゃあ、疲れるわイライラするわで、俺は一服することにした。
縁側に腰掛けて、煙草をくわえた。

口に慣れた苦味が口腔に広がる。


視界の内に赤くくすぶる小さな火とくゆる煙を何気なくとらえながら、いつもみたいに煙草をふかしていた。


瞬間────


殺気と、太陽を反射する光とが唐突に閃いて───


俺はギリギリ、後方にのけぞる様に身を退いた。

視界には
眼前に、白銀の刃。

もう火のついていない煙草はかなり短くなっていて

切り落とされたらしい赤色の光と、くゆる煙…

大分時間をかけて火はゆっくりと落ちて行くようにみえた。

硬直…いや、まじで硬直。

ぎぎっと、まだ硬直気味の身体の首だけで、その眼前の切っ先から刀をつたいあがるように、刀の使い手を眼で辿った。




もちろんいたのは総悟だった。
俺に切りかかってくる奴なんざぁこいつくれぇだ。
…しかもなんでか例の人を舐め切ったアイマスクとかしてやがる…。

「総〜〜悟〜〜〜ぉ…!!」
「ややっ!その声は土方さんじゃねえですかぃ?」
「じゃねえですかぃ?じゃねぇっっ!!なんのつもりだコラぁ?!」
「声はすれども姿は見えず…全く不思議なこともあるもんでさぁ」
「それはずせこらァ!!」

「おおっ!土方さんそんなところに!」

総悟はアイマスクを上にずらすとパチンと額でとめてオーバーリアクションに驚いてみせた。

完っ全になめてやがる…


「何のつもりだコラ」
「なにがですかぃ?」

「今テメエが切りかかってきたんだろうがぁ!!」

総悟の野郎はこっちが切れたところで喜ぶだけだ、努めて冷静に…とは思ったもののこれも性分…結局怒声をあげるはめになる。

「違いやすぜ、土方さん」
「ああっ!?何がだ!?」
>
「ただの素振り、剣の稽古でさぁ」
「すっっげぇ的確に頭蓋骨狙ってたろうがっ!!」

怒鳴りつけてやると今度は人差し指をピッと立てて、チッチッチと降りながら、また総悟が言う。

「違いやすぜ土方さん、ドタマ潰そう何てそんな」

「なあんだってんだよ…っ!!」
「狙ったのぁ煙草の切っ先でさぁ、」

「嘘付けこらぁ!!……いや、やっぱ狙ってたんじゃねぇか!!」



「しっかし、おめえ…俺がよけなきゃあドタマ割れてたぞ!?何処が煙草狙ってたってんだ!?」

「なめねえで下せぇ、どれくらいで切りかかったら土方さんなら避けれるかってことくれぇ見りゃあ、わかりやす」

総悟はそういってニヤリとした。
俺の間合いは完全に理解してるってことか…?何処までも舐めてくれたもんだ…一度思い知らせて置くべきだろうな…
…と、剣に手をのばそうとして、はたと気がついた、
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